スルバランの画風の変遷をたどる

フランシスコ・デ・スルバラン 《神の仔羊》 1635ー40年頃 油彩/カンヴァス サンディエゴ美術館 ©️The San Diego Museum of Art

 スルバランは17世紀スペイン絵画を代表する画家。柔らかく温和な雰囲気の宗教画が人気だが、スルバランの高い写実性と神秘性は肖像画や静物画においても発揮された。《神の仔羊》は「神聖なるボデゴン」と呼ばれる静物画の名作。光輪を冠した仔羊が祭壇のような石台に載せられ、犠牲に捧げられる時を待っている。

フランシスコ・デ・スルバラン 《聖母子と聖ヨハネ》 1658年 油彩/カンヴァス サンディエゴ美術館 ©️The San Diego Museum of Art

 残り3点、《聖ヒエロニムス》《洞窟で祈る聖フランチェスコ》《聖母子と聖ヨハネ》は宗教画。晩年の代表作である《聖母子と聖ヨハネ》には、それまでの徹底的なリアリズムが消え、甘美な情緒があふれている。じゃれあう子供たちを見守る聖母マリアの穏やかな表情が印象的だ。

 展覧会ではこれら4点のサンディエゴ美術館のコレクションに合わせて、国立西洋美術館が所蔵する初期の名作《聖ドミニクス》も紹介。真っ黒な暗がりに佇む聖ドミニクスの姿が、犬がくわえた松明の灯りによってドラマチックに浮かび上がっている。国立西洋美術館の常設展で何度も見たことがあるという人も多いだろうが、サンディエゴ美術館の“聖人たち”と並べて展示されることで、初期の厳格なリアリズムから晩年の柔和な表現まで、スルバランの画風の変遷をたどることができる。