いきなりの減給にブチ切れた27歳のクロック

「一生の仕事にする」と言うほど満足していた会社員生活から、クロックが抜け出したわけは2つあります。

 一つは、業績不振により減給を言い渡されたことです。ある日、クロックは呼び出されると、「きみの営業成績は非の打ちどころがなく、会社としては心から感謝している」と前置きをされたうえで、減給と経費カットの話を切り出されました。

 全社員を対象にした処置でしたが、クロックは納得できませんでした。

「私はショックを受けた。減給うんぬんより、仕事に対するプライドが傷つけられた。これがナンバーワンセールスマンに対する処遇なのか?」

「受け入れられない」とクロックが告げるも、「選択の余地はない」ときっぱり言われたので、すぐさまこう言い返しました。

「選択の余地がない? それなら辞めます。今この場で辞職宣言して、2週間後にはもうここには来ません」

 これには会社側も慌てたようで、結局はクロックだけに特別手当を出すことで、減給分をカバーすることになりました。

 今の不景気な世の中を考えると、会社の理不尽な仕打ちは、どこにでもありそうな話です。クロックの場合は、抜きんでた結果を出していたがゆえに、強気な態度に出て、会社側が折れることになりましたが、レアケースでしょう。

 40代という年齢もあってか、私の周りでも転職ではなく、独立の道を選ぶ友人が少なくありません。自分の決断で行動した結果としての不遇のほうが、まだ受け入れられるということなのでしょう。

 会社から一方的な通告を一度でも受けると、たとえ一度は思いとどまったとしても、組織への不信感はぬぐい切れないもの。クロックもまた、まったく違う角度から、長年勤めた会社への不満を募らせることになります。