マクドナルドの創業者、レイ・クロックマクドナルドの創業者、レイ・クロック(写真:ED/RA/Camera Press/アフロ)

 残された年月を考えると、ここからどんな人生にしていけるのだろうか――。「ミッドライフクライシス(中年期の危機)」という言葉があるように、40~50代は身体の衰えを感じ始めるなかで、仕事でも私生活でも壁にぶつかりやすい時期だ。実は、後世で「偉人」と称された歴史人物たちも、同じような困難に直面し、「中年の危機」を乗り越えることで大きく飛躍した。マクドナルドを創業したレイ・クロックが送った激動の生涯から、人生の後半で活躍するためのヒントを探る。

(*)本稿は『大器晩成列伝 遅咲きの人生には共通点があった!』(真山知幸著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・再編集したものです。

「人生に大したことは起きない」という思い込み

 この先の人生では、大したことは起こらないだろう――。年齢を重ねるにつれて、そんなふうに決めつけてしまいがちですが、偉人の生涯を数々みていると、そんなことはないな、と実感します。

 マクドナルドの創業者レイ・クロックは職を転々としたのち、17年間にわたってリリー・チューリップ・カンパニーという会社で、紙コップの営業を行っていました。クロックが在職していた頃、特に1927年から1937年にかけての10年間は、紙コップ業界が急成長した時期です。クロックも仕事にやりがいを感じながら、日々働いていました。

 ガラスのグラスに比べて、紙コップは衛生的で破損による危険もなく、テイクアウトにも対応できます。巧みなセールストークで自社製品の長所を打ち出しながら、クロックは社内でトップの販売成績を誇ったといいます。

 会社に認められて、セールスマネジャーにまで出世もした……まさに順風満帆です。自伝でこう振り返っています。

「私はこの仕事を自分の一生の仕事にすると誓いを立てた。生活のすべてをかけ、ほかの仕事にはいっさい目もくれなかった」

 まさに今の仕事が天職だと感じていたクロック。しかし、人生というのはわからないものです。そこから妻の反対を押し切ってまで、クロックは二度にわたる大転換を図ることになります。