イスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相(右)との会談後に共同会見を行った米国のルビオ国務長官(2025年2月16日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(松本 太:日本国際問題研究所プラットフォーム本部長、前駐イラク大使、元駐シリア臨時代理大使)

 中東での動乱が続いている。イスラエルとハマスが繰り広げるガザ問題にせよ、レバノンへのイスラエル軍侵攻やシリアでの政権交代にせよ、日本に住んでいれば所詮他人事と思っている方が実は多いのではないか。「やはり中東地域は遠いのだから。おまけに中東での出来事は難しくてよく分からない」と思いつつ。

 残念ながら、そうした楽観的な思い込みは早いうちに捨てておいた方がよい。面倒で分かりにくいことは考えないようしようといった世間のムードは、いつも、ある日突然打ち砕かれることになるからだ。

 率直に指摘しよう。それは多分に、イスラエルがイランの核施設を攻撃するか否かにかかっている。それもそれほど遠くない近未来に。

 中東地域のこれまでの数々の動乱は、イスラエルとイランの直接的な対峙へと至る前哨戦でしかなかったと覚悟しておく必要がある。本稿では、水面下で動きつつある、イスラエルによるイランの核攻撃施設への攻撃の可能性について考察してみたい。

イスラエルがイランを2025年前半にも攻撃する?

 2月12日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙ワシントン・ポスト(WP)紙は立て続けに、米国情報筋の情報として、イスラエルがイラン核施設を2025年前半にも攻撃する可能性が高く、中東地域における緊張が高まるとの評価を米国情報機関がバイデン前政権に伝えたと報道している。

 昨年(2024年)にはイランは核爆弾4個に匹敵する182キログラムの濃縮ウラン(42キログラムで核爆弾1個分と推定)を保有するに至っており、イスラエル側の安全保障上の苛立ちは実に深刻なものとなっている(参考:“Policy Steps to Prevent a Nuclear Iran”,THE WASHINGTON INSTITUTE for Near East Policy)。トランプ大統領がその就任後、最初にホワイトハウスに迎えた外国の首脳は、ネタニヤフ首相であったことは周知のとおりだ。