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(国際ジャーナリスト・木村正人)
官僚主義的な非効率性の落とし穴
[ロンドン発]ドナルド・トランプ米大統領の有人火星探査“マーズショット”計画と中国企業「DeepSeek(深度求索)」が開発した激安オープンソース人工知能(AI)モデルの衝撃により米中による研究開発競争に改めて焦点が当たっている。
1957年、旧ソ連が世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功した「スプートニク・ショック」とその後の米国のアポロ計画による逆転劇は、硬直的で中央集権的なソ連式の体制よりオープンで柔軟なイノベーション・システムの方が長期的には勝利することを証明した。
米中の研究開発競争も米ソ冷戦と同じ軌跡をたどるのか。国家統制を強める中国の習近平国家主席だが、今のところ官僚主義的な非効率性と競争欠如の陥穽にはまっていない。一方、トランプ氏は西側最大の“武器”であるネットワーク力を孤立主義と保護主義で損ねる恐れがある。
米ジョージタウン大学にある安全保障・新興技術センター(CSET)は2022年の報告書「大学AI教員不足:米国大学は増加するAIスキルの需要に応えているか」で「全米の大学のコンピューターサイエンスにおいてAI教育の需要に教員採用が追い付いていない」と指摘している。