アイゼンハワーの「軍産複合体」演説

 第二次大戦時、連合国遠征軍最高司令官だった米大統領ドワイト・D・アイゼンハワー(共和党)は1961年1月の退任演説で「軍産複合体」という言葉を用いて拡大する軍需産業の影響力とそれが民主主義、統治、国家の優先事項に及ぼす潜在的な危険性について警鐘を鳴らした。

1960年12月6日、ホワイトハウスの大統領執務室での会談前に記者団の前に立つ退任目前のアイゼンハワー大統領と次期大統領のジョン・ケネディ(写真:JT Vintage/ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
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「政府の会議において軍産複合体による不当な影響力の獲得を常に警戒しなければならない」という警告は冷戦による国防費の恒久的な増加によって軍需産業、軍・国防総省、ホワイトハウス、議会が抑制の効かない権力構造を形成することに対して発せられた。

 第二次大戦は米国に巨大な軍需産業を出現させ、冷戦下、ソ連との対立激化で核兵器や技術開発を含む莫大な軍事支出が正当化された。朝鮮戦争、ベトナム戦争で軍需産業は巨大な利益を得、大統領選への献金やロビー活動を通じて米国の外交政策に大きな影響力を持つようになった。

 中国との宇宙、AI開発競争が熾烈を極め、マスク氏のスペースX、パランティア・テクノロジーズなどの企業は衛星インターネットやビッグデータ分析プラットフォームの軍事利用から利益を得ている。アイゼンハワーの警告は現実のものになった。