1秒をけずりだして、20年連続のシード権に到達

 大ピンチを乗り越えて、東洋大は総合9位でフィニッシュ。継続中の記録としては最長となる“20年連続シード”に到達したことになる。エースを欠いたなかで、シード権を確保できた理由はどこにあったのだろうか。

「往路でシード圏内に入っておくことは非常に重要で、復路の選手たちが心の準備を整えるためにも必要なことでした。往路を終えた時点で9番にいたことは、とても大きな意味を持っていたと思います」

 酒井監督はまず往路の健闘を挙げた。そして、東洋大のチームスピリットである「その1秒をけずりだせ」を選手たちが体現したのが大きかったという。

「今回は各区間のラストスパートで1秒をけずりだすような走りができたと思います。2区の緒方は区間20位でしたが、戸塚の壁で前との差を詰めました。6区の西村もラスト3kmは昨年より力強い走りをしたと感じています。 エース不在にもかかわらず、シード権を確保できた理由はここにあると思いますね」

 一方で箱根駅伝のレベルが高騰していることも強く実感したという。

「箱根駅伝の全101回大会のうち約5分の1が連続シードにつながっていることになります。ただ今回は『4位以内』を目標に掲げていました。そのなかで緊急事態が重なり、最低限シード権だけは確保しなければならないと強く思っていました。チームとしての意地もありましたし、再び上位に進むためにもシード権を確保することが不可欠だと、選手たちも理解していたと思います。ただ今回はシード権の獲得ラインも高かったですし、今後トップスリーを目指すには、10時間45分という総合タイムが必要になってくるでしょう。今回(10時間54分56秒)から各区間で約1分ずつ詰めなければ、3位以内は現実的ではありません。それくらいの意識を持って、再び、優勝争いに加わっていきたい」

 箱根駅伝で20年連続シードという節目を迎えた東洋大。エース不在の窮地を乗り越えたことで、鉄紺はさらにたくましくなり、今後はもっと強くなるだろう。