写真提供/ナイキジャパン

(スポーツライター:酒井 政人)

ルーキーふたりが出走した往路は9位

 今年の箱根駅伝は石田洸介と梅崎蓮の4年生エースが欠場した東洋大。チームに不安と動揺が広がっていた。しかし、鉄紺はしぶとかった。急遽のオーダー変更があった往路を9位で乗り越えると、最後は壮絶なシード権争いを勝ち抜き、総合9位でフィニッシュ。見事、20年連続シードを果たしたのだ。出走した10人はどんな思いでレースに臨んだのか。全員の言葉をお伝えする。

 小林亮太(4年)は当初、3年連続となる3区を予定していたが、大会前日に1区での出走が決定。故障上がりながら、2位の駒大と13秒差の区間11位と好走した。

「1区は大きなプレッシャーがありましたが、石田と梅崎は自分たちのために気持ちを押し殺してサポートしてくれたので、走りで応えたいという思いが強かったです。監督からは『集団にしっかりついていくように』と言われていたので、中大・吉居駿恭選手の飛び出しは気にせず、集団のなかで体力を温存しようと考えて走りました。 最低限、集団のなかでタスキを渡せたのは及第点だと思います。ただ、もう少し前で渡せていれば、緒方も余力を持って走れたのではないかと感じています」

小林亮太選手

 花の2区は当初1区を予定していた緒方澪那斗(3年)が担当。区間20位と苦戦して、19位まで順位を落としたが、1時間08分50秒でまとめている。

「洸介さんと梅崎さんが抜けて、チームの雰囲気が暗くなることもありましたが、走れない4年生の思いも背負って走ろうと気持ちを切り替えました。もともと自分は2区を走りたかったので、楽しみたいという思いが強かったんです。でもいざ走ってみると準備不足もあり、力負けしたのが正直なところです。3区以降の下級生や同期の岸本に負担をかけるかたちになってしまいました」

緒方澪那斗選手

 3区は復路に起用予定だった迎暖人(1年)が区間8位と好走。ルーキーが3人抜きの活躍を見せて、チームを熱くした。

「自分が3区に入るとわかったのは12月末です。石田さんが付き添いをしてくださり、『楽しんでこいよ』と声をかけてくれました。その言葉で気持ちが楽になったんです。最初の10kmを28分20~30秒で入るように指示を受けたので、覚悟を決めて、思い切っていきました。前の選手が見える状況だったので、とにかく前を追いかけました。最初の10kmは区間上位でしたが、後半はタイムが伸びなかったので、もう少しスタミナをつけて来季以降に生かしたいです」

迎暖人選手

 4区の岸本遼太郎(3年)は前回10区で区間賞を獲得した実力者。今回は往路の準エース区間を区間3位で突っ走り、7人抜きを披露した。順位を9位まで押し上げて、シード圏内に突入した。

「迎が積極的な走りをしてくれたおかげで、前の選手が見える位置で走ることができました。自分のところで流れを変えて、最低限、シード圏内まで戻すしかないと思っていました。とにかく前にいる選手を全員抜く気持ちで走ったんです。これまでの大学駅伝は単独で走ることが多かったんですけど、今回は競い合う楽しさを感じました。選手を抜く度に、自分の殻を破ることができて、良い走りができたと思います。 去年と比べても、自分のなかで大きく成長したと感じています」

岸本遼太郎選手

 5区は山上りを熱望していた宮崎優(1年)が当日変更で入り、1時間12分16秒の区間9位。立大に抜かれたが、東京国際大をかわして9位を死守した。

「出発前はガチガチでしたが、石田さんと梅崎さんから『初めての箱根駅伝、楽しんで来いよ』と声をかけていただき、緊張が和らぎました。11~12月にしっかり山上りの準備をしてきたこともあり、72分を目標にワクワクした気持ちでスタートを切ったんです。順位を落とす場面もありましたが、最終的に9位でゴールできたのは最低限良かったと思います。レースを振り返ると、71分台も見えていたのに、大きくペースを落とした部分がありました。そこは反省点として、しっかり改善していきたいです」

宮崎優選手