対中スタンスでさっそく「矛盾」

 第一に、政策面の矛盾だ。私は中国ウォッチャーなので、特に対中政策を注視しているが、マルコ・ルビオ新国務長官は就任早々、日本の岩屋毅外相、オーストラリアのペニー・ウォン(黄英賢)外相、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相を集めて、持論である「中国の脅威」を訴えた。

1月21日、ワシントンの米国務省で開かれた日米豪印外相会合 。左から日本の岩屋毅外相、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカール外相、マルコ・ルビオ国務長官、オーストラリアのペニー・ウォン外相(写真:AP/アフロ)
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 だがその間に、上海で巨大なテスラの工場を運営するイーロン・マスク効率化省(DOGE)責任者は、満面の笑顔で中国の韓正(かん・せい)国家副主席と会談している。

1月19日、ワシントンD.C.で中国の韓正副主席と会談するイーロン・マスク氏(写真:新華社/アフロ)
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 他にも、アメリカ国民がトランプ大統領に最も期待する政策は、インフレの抑制である。だが、製造業やサービス業の「底辺」に従事している不法移民を排除すれば、モノやサービスの価格は上がるに決まっている。中国やメキシコ、カナダなど各国に、むやみに関税をかけても同様だ。

 第二に、幹部間の「不和」である。今回のトランプ政権の幹部人事の最大の特徴は、「大統領への忠誠心」という一点で集めたということだ。歴代のアメリカ政権のような、理念や政策で共通する人々の集まりではない。

 そのため、幹部たちはトランプ大統領だけを見て仕事を始めている。例えば、前述のルビオ国務長官とマスク効率化省責任者には、何の「接点」も感じない。各々「横のつながり」が希薄で、まるで結(ゆ)わえていない藁束(わらたば)のようなのだ。