アメリカはAIに全振りする
この一年近く、アメリカ政界に旋風を巻き起こしてきたマスク氏の発言の中で、私が特に印象に残っているものがある。それは、11月24日から26日にかけて「X」に投稿した、アメリカが誇る「世界最新鋭の戦闘機」に関する一連の発言だ。
「いまだに愚か者は、F-35のような有人戦闘機を製造している」
「ドローンの時代に有人戦闘機なんて時代遅れだ。パイロットが犠牲になるだけではないか」
「有人戦闘機は、ミサイルの射程を伸ばしたり、爆弾を落としたりする手段としては非効率だ。再利用できるドローンなら、人間のパイロットに要する全費用をかけずにそれが可能だ」
「敵の軍隊が高度なSAM(地対空ミサイル)やドローンを配備している場合、戦闘機は早晩、撃墜されてしまう。そのことはロシアとウクライナの戦争で証明されたではないか」
まさに正論である。『スターウォーズ』などのSF映画を見ても、近未来の戦争は無人機やロボット兵器同士で行っている。つまりは「AI兵器」だ。
マスク氏やGAFAの経営者たちに共通しているのは、AIの活用に秀でているということなのだ。そうなると、AIによってアメリカ政府の効率を最適化したり、国務省の外交政策をAIが考えたりといったことが本格化するだろう。図らずもトランプ大統領は、就任初日に、AI規制を撤廃する大統領令に署名した。
総じて言えば、トランプ時代とは、「人間の時代」から「AIの時代」への橋渡しとなる「過渡期」を意味しているのかもしれない。「人間がAIに支配される時期を早めた」とも言えるかもしれないが。