キリスト教徒にとってユダヤ人が厄介な理由
船津:キリスト教徒から見るとユダヤ人は少し厄介な人たちです。
キリスト教徒はおよそ24億人いるのに対しユダヤ人は1600万人ほど。数でいったら比べ物になりません。でも、ユダヤ教がなければキリスト教は存在しませんでした。キリスト教の母体であるユダヤ教がキリスト教を受け入れてくれればハッピーなのですが、ユダヤ教徒はキリスト教の新しい神との約束をがんとして受け入れません。
例えば、アメリカ人のキリスト教徒がキリスト教を棄教してもアメリカ人のままですが、ユダヤ人がキリスト教を受け入れたらユダヤ人ではなくなってしまいます。それはキリスト教が普遍的な世界宗教なのに対し、ユダヤ教はあくまでユダヤ人の民族宗教だからです。
「反ユダヤ主義」と呼ばれるユダヤ人差別や迫害は、弱者に対する一般的な差別・迫害と違います。キリスト教がユダヤ教に対して抱く一種の劣等感が背景にあります。近親憎悪と呼んでもよいかもしれません。
トランプ大統領の岩盤支持層といわれるキリスト教福音派は強くイスラエルを支持していますが、本音を言えば、イスラエルのユダヤ人がキリスト教に改宗してくれないかなという隠された願望を持っています。
キリスト教の母体であるユダヤ教徒がキリスト教徒になってくれてこそ、キリスト教の正しさが確証され、ユダヤ教へのコンプレックスも解消されるのです。
イスラエルという国はアメリカと比べれば小国です。アメリカの庇護があるからこそ、ここまでやってくることができました。イスラエルにとってアメリカは大事な存在です。でも、その一方でアメリカに警戒心も抱いています。
イスラエルは移民の国です。旧約聖書に基づき、神様からユダヤ人に与えられた「約束の地」であることが移民先となる大前提ですが、実際には現在アメリカで多くのユダヤ人が恵まれた生活をしています。
アメリカのユダヤ人差別は昔に比べれば随分少なくなりました。アメリカもユダヤ人にとっての「新しい約束の地」だという感覚が生じています。
イスラエルに移住しなくとも、アメリカで幸せにやっていける。ユダヤ人にとって、イスラエルとアメリカは競合する関係にあるとも言え、この辺りは複雑なところです。