「プラザ合意2.0」で利害が一致する日米欧
仮に「プラザ合意2.0」が現実的に求められる場合、その大義として第二次トランプ政権は米国の貿易赤字の大きさを持ち出すだろう。特に、圧倒的な対米貿易黒字を誇る存在として中国が(これまで通り)敵視されることは言うまでもない。
ただ、G7で米国の次に対中貿易赤字が大きいのは、実は日本である。現状で、日本で対中貿易赤字の大きさが争点になっているわけではないが、そもそも貿易赤字の大きさ自体が円安の一因として注目されている以上、中国の貿易黒字の大きさを理由にした「プラザ合意2.0」や、これに伴うドル高是正は日本にとって「渡りに舟」という側面もある。
例えば、米国が通貨高の是正を、日本が通貨安の是正を希求した場合、互いの利害は一致する。日米だけではなく、ドイツを除けばG7は対中貿易赤字だ。EUレベルで見ても、やはり欧州全体としても対中貿易赤字を抱えている(図表③)。
【図表③】
昨年下半期以降、ユーロ安の深刻度もそれなりに増しているので、通貨高の是正を米国が、通貨安の是正を日欧が求めるような構図になりやすいように思える。
ちなみに、名目実効相場で見れば、2022年1月対比で人民元は0~▲5%で穏当な通貨安が続く一方、ドルは優に+10%を超えている。現状では「仮想敵国である中国が意図的に通貨安に誘導し、米国を筆頭とする西側陣営が割を食っている」という構図を主張できなくはない。このような状況を踏まえ、西側陣営で結託してドル相場を低位誘導しようという発想はトランプ次期大統領らしい発想でもある。