トランプ政権はドル高をどこまで許容するのか?
もちろん、インフレ高止まりが社会問題化し、そのおかげでバイデン政権が倒れ、自らの再選にこぎつけたという背景を思えば、建前では低金利・ドル安を望みつつも、本音では「インフレが終息しない間はドル高を容認」とトランプ次期大統領は考えるだろう。
ベッセント次期米財務長官が財政規律派ゆえに米金利が低下し、結果としてドル安が実現するという解釈も一時期は持てはやされたが、時の政権にとって世論の離反につながりやすいインフレこそ忌避すべきであり、基本的には「ドル高の方が都合は良い」と考えるのが自然である。
とはいえ、実効ドル相場を見た場合、ドルは名目・実質ベースともに過去10年以上、上昇局面が続いている。実質ベースに至っては、既に1985年のプラザ合意前後の水準に接近している(図表①)。
【図表①】
国際協調によるドル高是正が正当化された時代と同水準のドル高が視野に入る事実を、保護主義推進者であるトランプ氏はどう評価するのだろうか。
1985年当時のカーター前大統領は、米国内(特に米国議会)の論調が保護主義に傾斜することを危惧してプラザ合意の必要性に至ったが、トランプ氏は自身の政治信条に基づき率直なドル高是正を求めるかもしれない。
もしくは、為替経路ではなく、ドル高を放置した上で、保護主義者らしく追加関税というより制裁色の強い挙動に訴えかける可能性もある。いずれにせよ、ドル高が放置された場合、それが政治的に許容されるのかは注目の論点と言える。