対中国でも、対主要国でも大きな貿易赤字を抱えている米国

 米国の対中貿易赤字は2023年時点で2787億ドル(GDP比で▲1%)と、近年の両国関係を反映して13年ぶりの低水準まで縮小している。だが、それでも米国の貿易赤字(約1兆ドル、GDP比で▲3.8%)の約4割が中国という状況は目立つ(図表④)。

【図表④】

米国の貿易赤字の推移

 対米貿易赤字の大きさに関し、中国に次いで大きいのがメキシコ(1614億ドル)、これにベトナム(1046億ドル)と続くが、これらの国は中国から部材を輸入し、米国へ輸出するという加工貿易の結果が含まれていることで知られる。

 当然、こうした貿易取引は第二次トランプ政権も問題視するところだ。極端な話、メキシコやベトナムまで対中貿易の結果だと判断すれば、米国の貿易赤字の半分は中国という着想にも至る(実際は台湾や韓国、何より米国の自動車企業による輸出も含むため、全てが敵対視される筋合いではないが)。

 ちなみに、メキシコのほか、ベトナムの次に対米貿易赤字が大きいカナダ(▲723億ドル)など旧NAFTA諸国には米国の自動車会社が工場を構え、米国に輸出している。

 トランプ氏は、第二次政権でメキシコとカナダからの輸入品全てに25%の関税を課すと述べているが、これは自国企業を圧迫する行為でもあり、要は「米国内で作れ」という意思表示と考えられる。

 なお、カナダの次に対米貿易赤字が大きい国は日本(▲719億ドル)である。過去のコラムでも議論したように、日本は既に多額の対米投資を実施済みだが、やはり因縁はつけられやすいだろう。

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 結局、米国は対中国でも、対主要国でも大きな貿易赤字を抱えている。そのため第二次トランプ政権が「プラザ合意2.0」に踏み込むとした場合、対人民元でのドル高是正であれ、対主要通貨でのドル高是正であれ、それなりに理屈は立つ。

 政治的には対人民元を前面に押し出した方が分かりやすいが、米国第一主義と整合的にドル安誘導を企図するならば、シンプルに「米国の過剰な貿易赤字を是正する」という大義と国際協調を強弁するかもしれない。

 ただ、米国の求め方はどうあれ、通貨安の是正は日本やユーロ圏にとって悪い話ではない。