商標、著作権、日韓問題。あえて “腫れ物“に触るアーティスト
京都・岡崎の小さなギャラリー、KUNSTARZT(クンストアルツト)。ここで12月、戒厳令に世間がざわついたタイミングで開催されていた「日韓朝美術」展。
キュレーションは、ギャラリーオーナーでアーティストの岡本光博。自身の作品は、日韓朝問題を象徴するオブジェが詰めあわされたボックスアートだ。
箱の中には、日本海をEast Seaと表記した韓国の地球儀、汚染水の排出を連想させるタンクのミニチュア、日本兵が使っていた避妊具「突撃1番」のパッケージ、日本の自販機で悪用された偽造500ウォン硬貨、日本のロボットアニメを模倣した「テコンV」のフィギュア(この像を竹島に作る計画があるという)がコラージュされている。
ほかの箱には、伊藤博文を暗殺した犯人を記念した切手、朝鮮人が創氏改名で名乗らされた日本名と本名がダブルフェイスになったハンコもある。
日韓朝のセンシティブな問題を、これでもかと盛り込んだユーモアがキツい‥‥いやはや、これ、大丈夫なんですか?
フェイク/本物を問う作品「バッタもん」でルイ・ヴィトンから警告
実は、岡本には「大丈夫じゃなかった」経験もある。2010年、ブランドバッグの生地をバッタの形に縫製した作品「バッタもん」を神戸ファッション美術館で発表した際に、ルイ・ヴィトンから警告を受けた。
「バッタもん」とは、関西弁で偽ブランド品(並行輸入品という説もある)を揶揄する言葉。「バッタ」というポップな語感でフェイクを笑うのが面白い、と、文字通りのブランドバッグ×バッタの彫刻をつくったものだが、ヴィトンからは「展示も広報も許さない」と、市長、美術館、岡本宛に警告状が送られてきた。
訴えは「商標権侵害」だったが、岡本が作ったのはバッタもんのバッグではなく、バッタの「アート作品」だった。
「お金を貯めて、弁護士と一緒に戦うつもりでいたんですが、話が進展しなくて。そのお金で、自分や他の作家のために、検閲を受けずに発表できる場所を作ろうと思って、このギャラリーを開きました。ちなみに、もらった警告状は、いま僕の作品になっています」