とにかく混雑する京都観光。地元も対策していないわけじゃない。ピークタイムを避けた「朝観光」、「夜観光」の奨励も、そのひとつ。とはいえ、京都でのナイトライフは、東京や大阪ほどは選択肢が多くないのも事実。そこで、京都にしかない景観、ゆったりした庭や、荘厳な寺院を昼にはみられない姿で楽しむ、光のアートやライトアップイベント、夜間拝観が、秋の京都で賑わうようになってきた。

有名な観光名所が、闇にシルエットを引き立たせながら輝きを競う様は、修学旅行の京都の思い出にはない、大人の京都の楽しみだ。昼夜、両方足を運んで、激変するムードを楽しむのも、一興だろう。

しかし、場所によってはここでも混雑が待っているのでご用心。2024年秋の、大人におすすめのライトアップを厳選した。

夜の京都府立植物園で、植物と光のコラボアートLIGHT CYCLES

日本最古の公立植物園として開園100年を迎えた京都府立植物園が、期間限定で夜間開放される。そして、日本最大級の観覧温室を会場にした、光と音の幻想的な没入型アートイベント「LIGHT CYCLES」が開催中だ。
世界各地でプロジェクトを展開するマルチメディアスタジオ、モーメント・ファクトリーによる作品。観覧温室内の4つのゾーンで、植物とライティング、サウンドの競演を楽しめる。

モーメント・ファクトリーは、カナダを本拠地とするマルチメディアスタジオ。最初のゾーンは、木漏れ日にインスピレーションを受けた「LIGHT WILL FIND YOU」
二つ目のゾーンは、雨音や雷鳴のサウンドで、植物の活力を感じる「MEMORY OF WATER 水の記憶」
夜光性の生き物の気配を感じつつ、本能を研ぎ澄ます体験「(IN)VISIBLE見えるもの/見えないもの」は、3つ目のゾーン
ディスコのようなノリノリのサウンドで、ジャングルの躍動する命を感じるような「FOREST FREQUENCIES」が、最後のゾーンを締めくくる

夜の植物園、温室の中ということを忘れてしまいそうな、異空間の音と光のショーは圧倒的なのだが、その合間にふと、すぐそばに迫った植物のシルエットや生き物の息遣いを感じる瞬間がある。そんな緩急の中で、100年を超えてこの植物園が伝えてきた植物の生命とその魅惑というものを、新鮮な思いで感じることもできる。鑑賞後は、植物園内の暗い木立の中を散策して、チルアウトも心地いい。 

LIGHT CYCLES KYOTO
京都府立植物園
12月26日まで
18:00〜21:30(20:30最終入場)
当日大人 2,500円
https://www.lightcycles-kyoto.com/

なんと、たなびく雲海の演出で、国宝、重要文化財と紅葉が神秘的に輝く

雲海がたなびく中、重要文化財の五重塔のシルエットが輝く

京都の西に位置する仁和寺。秋の特別拝観では、国宝の金堂と、重要文化財の五重塔が夜の闇の中にシルエットを浮かび上がらせ見事だが、さらに、京都ではここだけの、スモークによる神秘的な雲海の演出がある。

雲のような参道の向こうに、国宝・金堂が

仁和4年(888)創建、平安時代から歴史を刻み、皇室とのゆかりも深い雅な古刹が、あたかも絵巻の一シーンのように浮かびあがる。忘れ難い思い出になるだろう。御影堂、観音堂、と、歩くほどに見どころが多い。

仁和寺 紅葉雲海ライトアップ
12月8日まで
18:30〜21:00(20:30受付終了)
大人 2,800円
https://ninnaji.jp/news/event-9/

足利義満にゆかりの静かな禅寺「鹿王院」。嵐山の穴場で、秋の夜の静けさ堪能

鹿王院は足利義満が康暦元年(1379)に建立した、臨済宗の禅寺。嵐山の穴場として知る人ぞ知る名刹だ。予約制、人数限定の夜間拝観では、静かな夜の紅葉見学ができる。

©水野秀比古
細い参道にしだれかかる紅葉がライトアップされて美しい

日本では今や珍しい路面電車、「嵐電」で出かけるアクセスも楽しい。竹林を抜けて苔むした参道をゆくアプローチも風情たっぷりだ。

©水野秀比古
竹林の参道は幽玄な眺め。観光スポットが密集するエリアにはない静寂がある
夜間特別拝観は、お抹茶と和菓子つき。お庭をのぞむお座敷でゆったりと

鹿王院夜間特別拝観
11月15日から12月8日まで
17:30〜20:00(19:30最終受付)
3,000円 要予約
https://rokuouin.com/4173/