ドイツで発表された「ユーロリング」(2002)は、観客が持参したユーロコインの中央をハンマーで砕き、枠を指輪として返すパフォーマンス。犯罪か? アートか?と激論されたが作品は大好評だった

表現の危機の時代にヒントにしたい「反骨のアート思考」

ビジネスの世界で、アートの創造性でイノベーションを促す「アート思考」がもてはやされているのだが、その創造は、忖度ない自由な発想があってこそ。炎上やコンプライアンスを気にするあまり、皆が萎縮する世の中では、まずそこを乗り越える心構えが必要だ。ずっと「腫れ物」に挑んできた岡本には、閉塞を打ち破る「反骨」のアート思考がある。表現の自由のための「5箇条」を挙げてもらった。

1法は犯さない

「危ない」ことに表現で挑んでも、違法行為に手を染めるアブない人になってはいけない。「バンクシーのように、法を犯して器物破損をしなくても、社会に訴えられる方法がアートです」

2表現のグレーゾーンを狙え

厳密にはクロかもしれない行為も、アートの世界では許容されるグレーゾーンがある。「著作物で守られている表現を、権利侵害せずに表現に使うことができるフェアユースという考え方もあると知ってほしい」

3アンチや批判は、社会変革の起爆剤

「ドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスが『アートは社会変革の起爆剤』と言いました。爆弾的な表現が突きつけられて、観客に変な正義感スイッチが入って炎上する。これは、日常とはレベルの違うコミュニケーションで、むしろ楽しみなことだと僕は思います」

4表現は慎重に、でも忖度はせず

「作品には、やっぱり誰かを「傷つける」ことって、あるとは思う。自分の中での「どこまでなら責任を持てるか」の線引きは極力、慎重に。でも忖度はしません」

5メッセージを正しく語るのは美しさ

美術である以上、大切なのは美。「どんなに下世話で、賛否両論あるテーマでも、美しいものは心に響きます。だから作品の完成度には注意をしています。工芸的な価値観は日本の良さでもある」

常に時事ネタにアンテナを張る岡本の最新作は、パレスチナをテーマにしたものだ。1月、銀座・蔦屋書店で、作品の展示が予定されている。

Watermelon SPLIT(2024) 
パレスチナでイスラエル軍から配布された退去命令チラシでスイカをかたどる。 2025年1月10日(金)~23日(木) 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUMで作品を販売