表現の危機の時代にヒントにしたい「反骨のアート思考」
ビジネスの世界で、アートの創造性でイノベーションを促す「アート思考」がもてはやされているのだが、その創造は、忖度ない自由な発想があってこそ。炎上やコンプライアンスを気にするあまり、皆が萎縮する世の中では、まずそこを乗り越える心構えが必要だ。ずっと「腫れ物」に挑んできた岡本には、閉塞を打ち破る「反骨」のアート思考がある。表現の自由のための「5箇条」を挙げてもらった。
1法は犯さない
「危ない」ことに表現で挑んでも、違法行為に手を染めるアブない人になってはいけない。「バンクシーのように、法を犯して器物破損をしなくても、社会に訴えられる方法がアートです」
2表現のグレーゾーンを狙え
厳密にはクロかもしれない行為も、アートの世界では許容されるグレーゾーンがある。「著作物で守られている表現を、権利侵害せずに表現に使うことができるフェアユースという考え方もあると知ってほしい」
3アンチや批判は、社会変革の起爆剤
「ドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスが『アートは社会変革の起爆剤』と言いました。爆弾的な表現が突きつけられて、観客に変な正義感スイッチが入って炎上する。これは、日常とはレベルの違うコミュニケーションで、むしろ楽しみなことだと僕は思います」
4表現は慎重に、でも忖度はせず
「作品には、やっぱり誰かを「傷つける」ことって、あるとは思う。自分の中での「どこまでなら責任を持てるか」の線引きは極力、慎重に。でも忖度はしません」
5メッセージを正しく語るのは美しさ
美術である以上、大切なのは美。「どんなに下世話で、賛否両論あるテーマでも、美しいものは心に響きます。だから作品の完成度には注意をしています。工芸的な価値観は日本の良さでもある」
常に時事ネタにアンテナを張る岡本の最新作は、パレスチナをテーマにしたものだ。1月、銀座・蔦屋書店で、作品の展示が予定されている。