もう一つの「三位一体」

 この既得権益を守るために、総務省、NHK、民放という、もう一つの三位一体で始めるのが、新会社による中継局の共同利用なのです。

 岩盤規制に守られた放送業界は、高収益を享受してきた反面、新陳代謝もなく、画期的な新たなビジネスも生まれにくい体質になりました。また、横並び意識ばかりが先鋭化し、同質であることに安堵する内向き思考回路に陥りがちです。

 先の衆議院議員選挙の公示後の報道は、不思議なくらい各局が同じように抑制的でした。政党との無用な対立や政治権力の介入を避けようとする「守り」の姿勢が表れているようであり、国民(有権者)に判断材料を提供する役割を放棄しているかの様相でした。

 政治の世界で「壁」を壊そうという動きがあるにもかかわらず、放送業界は「壁」に閉じこもり、むしろ、それを強固にしようとしているかのようです。
 
 そうした守旧的思想は、結局、既得権益を守りたいところに淵源があるのではないでしょうか。その自縛から自由になれるのか、それは放送業界の帰趨を左右する重要なポイントではないかと考えます。