地方の放送体制維持のためにNHK受信料を投入していいのか?
NHKの2024~26年度の「経営計画」では、NHKと民放の二元体制の維持のための予算として、3年間で600億円が計上されています。この600億円は、受信料を溜め込んだ利益剰余金から出されるのです。
NHKの決算発表資料によれば、2023年度の受信料収入は6328億円です。民放キー局でトップに立つ日本テレビのテレビ広告収入は2261億円です。数字の規模感に着目すると、受信料制度が、NHKにとってよくできた仕組みであることがわかります。
テレビを見られる設備が家にあるだけで徴収される受信料制度に対して、多くの国民が強い反感を抱いています。見たい動画をサブスクで視聴するのが当たり前の時代なのに、見る・見ないに関係なく契約義務があります。また、全国で約2割の世帯が受信料を支払っていない不公平さが解消されていません。これらを踏まえると、受信料制度は奇異でしかありません。
そのうえ、民放のローカル局支援に受信料が使われるとすれば、さらなる反発を招くのではないでしょうか。地方の放送体制維持のために受信料を投入するという理屈に納得感が得られるでしょうか。
苦境にあえぐローカル局に対して、民放キー局が高収益を謳歌できるのは、放送局と広告会社とスポンサーの三位一体のビジネス構造によるものです。「テレビ離れ」と言われようが、今でも多くのスポンサーが、地上波テレビに媒体価値を認め、宣伝効果を期待しています。全盛期と比べれば視聴率が低下して、テレビ広告収入も減少していますが、番組制作費など人件費以外の費用を削減することで、社員の給与や賞与は高い水準を保てているということです。
三位一体の構造は、奇跡的なビジネススキームであり、これが維持できているのは岩盤規制に守られていることが大きいと思います。新規参入する企業はなく、地上波の広告収入という「パイ」を在京5社で分け合ってきたからです。