様変わりした「社会人野球」
社会人野球の選手の中には、ドラフトで指名されてプロに行こうという希望を抱く選手も多い。しかし前述のように高卒は3年間、大卒も2年間社会人野球に在籍しないとドラフトで指名されない。また、社会人の選手は「育成指名」はできないことになっている。
「育成でもいいからプロに行きたい」と思う選手の中には、退社して独立リーグに転身する選手もいる。
今も昔も社会人野球の選手の多くは「寮、合宿」で生活する。一応、企業の何らかの部署に所属をしているので、午前中に出社して簡単なデスクワークなどをしてから、練習をすることが多い。試合や遠征で長く職場に顔を出さないことも多い。
昔と違うのは、そういう選手でも会社側が「企業の一員、人材」という認識が強いことだ。多くの企業が、プロに行く選手も含め、会社に在籍している間は一般社員と同等の企業人として教育をするようになった。選手の多くは引退後、いろいろな部署に配属されるが、配属された職場での違和感は以前よりも小さい。近年は一般社員より出世して取締役や執行役員になることも珍しくない。
社会人選手の言動は非常に慎重で、失言めいたことを言う選手は少ない。文字通り「社会人」という自覚があるからだろう。
社会人野球チームは「株主の理解を得られない」など経営環境の変化で、減少している。それだけでなく「野球選手も一般社員同様、企業の一員」と考える企業が増えて、以前に比べてプロ入りをそれほど奨励しなくなったようだ。
同じ社会人野球でもクラブチームは、状況が大きく異なる。選手は他の仕事で報酬を得て、プレーをしている。多くは支援企業があり、その企業の社員や契約社員になっている選手も多いが、クラブチームの場合、平日の日中は夕方まで一般社員と同じように業務をこなし、夕方から練習に参加することが多い。
クラブチームは、企業チームと同様、都市対抗野球の予選に出場することができるが、実力差があるので全日本クラブ野球選手権大会が主戦場となっている。
仕事があるから練習時間は短くなる。過酷な環境だが、それでも野球を続けたい選手が、こういうチームでプレーをしている。企業チームが減少する中で、クラブチームは近年増加している。またごく少数だが、クラブチームからNPBのドラフト、育成ドラフトで指名されるケースも出ている。