昨年の第100回箱根駅伝。青学大3区の太田蒼生(右)を追う、駒大3区の佐藤圭汰(写真:共同通信社)
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(黒木 亮:作家)

 まもなく第101回の箱根駅伝の号砲が鳴る。箱根駅伝の距離であるハーフマラソンに特化し、厚い選手層を誇る青山学院大学が2連覇するか、10000m27分28秒50の佐藤圭汰と同27分35秒05の篠原倖太郎という2人のスピードランナーを擁する駒沢大学が昨年の雪辱を果たすか、あるいは昨年2月の大阪マラソンで2時間6分18秒の初マラソン日本最高記録をマークした「怪物」平林清澄を擁する國學院大學が初優勝を飾るのか、勝負の行方は興味が尽きない。

昨年の第100回箱根駅伝第1日目、国学院大の3区の青木瑠郁(左)にたすきをつなぐ2区の平林清澄(写真:共同通信社)
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 しかし、箱根駅伝の面白さは、勝負や記録だけではない。実際に箱根駅伝を走った元ランナーの視点から、ツウ好みの注目点をお届けしたいと思う。

 ひとつの注目点は選手の足音である。

異次元の足音

 筆者が知る限り、尋常ならざる足音を立てて走るランナーが、過去に2人いた。

 ひとりはマラソン15戦10勝の瀬古利彦氏である(筆者とは早稲田大学で同学年で、3年生のときは瀬古氏が2区で筆者が3区だった)。

1979年の第55回箱根駅伝、戸塚中継所にトップで飛び込んできた早大の瀬古利彦(左)が本稿の筆者・黒木亮氏にタスキを渡す=1979年1月2日(写真:産経新聞社)
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 選手の足音がよく聞こえるのは、自分が走っていて、後ろから迫って来られるときだ。筆者も練習や試合で色々な選手の足音を聞いたが、たいていパタパタパタという感じだった。これは1984年のロサンゼルス五輪の10000mで7位に入賞した金井豊氏(筆者の3学年下。1990年に合宿先の北海道で交通事故死)や箱根駅伝の1区で区間賞を獲った石川海次氏(筆者と同学年)ぐらいの一流ランナーでも同じだった。

 ところがある日、東伏見にあった早大競走部のホームグラウンド(400mトラック)の外側の周回コースを走っていたとき、まったく別次元の足音を耳にした。