緊急着陸の拒否は非人道的行為

 飛行中の航空機の位置、航路、高度、速度などを追跡できる「フライトレーダー24」のデータを見ると、3万フィートの巡航高度から1万フィート(約3000メートル)へ急降下している。

 これは機内で急減圧が発生したときにパイロットが行う操作であり、実際、客室の座席上の酸素マスクが降下している映像がある。客室の酸素マスクは15分しか保たないため、パイロットは管制官への連絡は後回しにしてでも酸素マスクの必要がない約3000メートルまで急降下しなければならない手順になっている。

 当機の機体に多くの穴が聞いたことで急減圧が発生したのかどうか、現時点で確定的なことは言えないが、低高度へ急降下する行為は明らかに緊急事態を示すものであり、これは速やかに最寄りの空港に向かう必要がある。

 そこで、近隣にあるロシア国内の複数の空港に向かおうとしたが、いずれも着陸許可が出なかったため、はるか遠方のカザフスタンへ向かったと伝えられている。

(図:共同通信社)

 民間航空機が緊急事態で着陸を要請しているのに、それを拒否するなど冷戦時代にも耳にしたことがない。

 これは私の想像だが、仮にロシア側の防空システムがアゼルバイジャン機を誤射したとしたら、着陸後に機体の損傷が動かぬ証拠となってしまう。それを避けたい思惑があったのではないか。ちなみに、異変が起きた後にGPSが電波妨害を受け、機の位置などの情報も途絶えていたとされる。

 緊急着陸の拒否やGPSの妨害などが本当であれば、アゼルバイジャン機が無事に緊急着陸するよりも、どこかで墜落しても構わないと考えたとしか思えない。非人道的行為である。元民間航空機の機長としては決して許されないものと非難したい。