SIAM SHADE スキルに裏打ちされた実力派ハードロック
LAメタルを想起させるギラついた派手さを持ったギター、テクニカルながらもタイトな演奏スキルとハイトーンボーカルで、硬派なロックファンにも多く支持されていたのがSIAM SHADEだ。
1997年リリースの「1/3の純情な感情」の大ヒットにより、ポップなハードロックというイメージも強いが、元々はLUNA SEAの後輩として、東京・町田PLAY HOUSEを拠点に活動していた黒服に長髪で濃いメイクを粧し込んだ生粋のヴィジュアル系バンドであった。
1994年5月、ドラムの淳士の加入を機に奇抜なメイクと黒服をやめている。ボーカルの栄喜が短髪になり、袖のない衣装で肌を露出するなど、いわゆる“脱ヴィジュ”をしているのである。同年12月にミニアルバム『SIAM SHADE』をリリース。黒服ヴィジュアル系時代の名残あるマイナー調のメロディとジャパメタ系譜を感じさせる、精確で巧妙なアンサンブルを聴かせる楽曲が並んだクオリティの高い名盤だ。
栄喜の突き抜けるボーカルはもちろんのこと、ボーカリストとしても活動していたKAZUMAとのツインボーカルのスタイルも確立されており、DAITAのシュレッドなギターも存分に堪能できる。
その流れでメジャーデビュー時にはテクニカルで硬派なハードロックバンドとして注目を浴びた。
バンドの大きな転機となったのは先述の「1/3の純情な感情」の大ヒットだ。フジテレビ系アニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のエンディングテーマになった同曲で『ミュージックステーション』や『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』といった人気音楽番組にも出演、ポピュラリティを得た。しかしながら当時B’zやZARDを手掛けていた明石昌夫によるメロディアスさをキャッチーに昇華した、同曲のアレンジにメンバーは納得いっていなかったという。だが、結果的に80万枚のセールスを記録し、バンド最大のヒットとなった。
こうした「1/3の純情な感情」のヒットにより、ハードロックバンドではなく、ポップロック、そしてヴィジュアル系の括りで語られるようになった。脱ヴィジュしたはずなのにそう見られてしまうという、現代にも通じるヴィジュアル系の偏見のようなものがあったのである。
そして、いつのまにかヴィジュアル系の括りになっていたバンドといえば、CASCADEである。