SOPHIA 生活に寄り添ったリアリティロック
松岡がギターの豊田和貴と組んでいたRose-Noir(ロゼ・ノアール)は黒服長髪の典型的なヴィジュアル系バンドである。であるから、SOPHIAもまた脱ヴィジュをしながらも、結局はヴィジュアル系に括られてしまったバンド、という言い方が正しいのかもしれない。
それぞれ名乗っていた、“神巳”(松岡)、“Gille”(豊田)という名前から姓名表記に変えたことや、ギターやベースに関しても、アーティストシグネチャーモデル全盛のヴィジュアル系シーンの中で、ギブソンやミュージックマンなどオーセンティックなモデルを使っていたことも、そうした脱ヴィジュを感じさせるところだ。
楽曲は明るくポップに振り切り、歌っている詞も厨二病皆無のリアリティに溢れた生活や人間関係に寄り添ったものである。当時国民的人気となったMr.ChildrenやスピッツといったJポップバンドへのヴィジュアル系シーンからの回答、なんて言葉がしっくりくる。松岡のフェミニンなルックスとキャラクターから繰り出されるあざといポップセンスは、彼だからこそ成立するもの。
短編小説と言われることの多い名曲「黒いブーツ 〜Oh my friend〜」(1998年11月リリース)も歌詞に注目されることも多いが、イントロの鍵盤といい、先打ちスネアの明るいビートなど、当時のブリットポップブームの影響を強く感じさせていたり、裸の女性のジャケットが当時の中高生が購入するのを躊躇った「ゴキゲン鳥~crawler is crazy~」(1998年4月リリース)のネオアコ的なアプローチであったりとシーンの中では異彩を放っていた。
ソフヴィとはブームの拡大と反動から生まれたもの
テレビ番組『Break Out』から生まれたヴィジュアル系四天王により、ヴィジュアル系はお茶の間にも波及し、大きなブームになった。ブームに乗って大きな人気を得たバンドも多いが、見た目だけで判断されるような呼称を嫌うバンドも多かったのも事実だ。SEX MACHINEGUNSは戦略として、あえてヴィジュアル系を名乗ることで成功したバンドであるが、THE YELLOW MONKEYは括られまいという発言をしていた。
そうした偏見もあったヴィジュアル系シーンの中で、脱ヴィジュしようとしていたバンドが新たなヴィジュアル系のスタイルになっていくのだから興味深い。元々明確な括りのないヴィジュアル系が、ブームに乗ってその定義が広まっていったところもあるだろう。
そしてソフヴィは、ヴィジュアル系ブームの沈静によって忘れ去れていくのだが、2000年代にBAROQUE(当時はバロック)を代表とする“オサレ系”に引き継がれていった(?)のである。