異例中の異例、運輸省が難色を示した

 最寄りのユーカリが丘駅からは、京成電鉄を利用して東京都心まで50分ほどかかる。普通のデベロッパーが分譲していれば、その住民たちは市営のバスや乗用車などで駅にアクセスし、そこから電車通勤することになるが、山万は住宅エリア内を循環するモノレール(自動案内軌条式旅客輸送システム/AGT)「山万ユーカリが丘線」を自前で敷設し、駅から各住戸への利便性を向上させた。

ユーカリが丘線1000形が走る(写真:HiLens/イメージマート)ユーカリが丘線1000形が走る(写真:HiLens/イメージマート)

 デベロッパーがモノレールという鉄道を持つことは異例中の異例だ。敷設にあたっては当時の運輸省が難色を示したというが、82年の開業以来、人身事故もなく住民の足として定着している。

山万ユーカリが丘線はいまも進化を続ける。2024年、駅の改札機には顔認証用タブレット端末が設置された=2024年8月、千葉県佐倉市(写真:共同通信社)山万ユーカリが丘線はいまも進化を続ける。2024年、駅の改札機には顔認証用タブレット端末が設置された=2024年8月、千葉県佐倉市(写真:共同通信社)

 また、当初は佐倉市が市営バスを運行する意向を示したが、環境問題を理由に山万はこの申し出を断ったという。

 そのうえでモノレールの補助交通機能として、早稲田大学や昭和飛行機工業などと共同で日本初の非接触充電型電気コミュニティバス「ここらら号」の運行も開始している(2020年より「こあらバス」に移行)。売り切り型の開発なら、そもそも交通網を整備することなど思いもつかないだろう。山万の街づくりにかける本気度がうかがえる。

 山万の街づくりは環境への配慮を大きなテーマにしており、近年では街中に電気自動車やバイク用の給電スタンドを設置し、電気自動車のカーシェアリングにも早くから取り組んでいるほか、分譲する戸建て住宅に太陽光発電パネルを実装している。