一度は街を出た子が、家族を持って帰ってくる
老若男女みんなが楽しめる街にするのが彼らの目的だ。人生にはいろいろなステージがあって、そのステージごとに住みたい家、環境は変わってくるはずだ。こうしたニーズに対して山万は、「ハッピーサークルシステム」というシステムを採用する。
戸建て住宅からエリア内の老人養護施設に移り住む高齢者の家を買い取り、リニューアルしたうえで若い世代に再販売することで、街の中でライフサイクルが起こる仕組みだ。その結果、この街で育って社会人になり、一度は街を出た子どもたちが、家族を持って再び街に帰ってくるようになったという。世代をまたいで同じ街に暮らせるシステムを自ら築くのが、ユーカリが丘で山万が実施しているタウンマネジメントなのだ。
千葉県佐倉市と言えば、都心居住が進んだ結果、都内への通勤圏としては残念ながら、今では「限界立地」とも言えるところになっている。現に佐倉市自体はここ数年で人口が減少に向かう地区が増え始め、大規模金融緩和後、同じ千葉県内の市川市や流山市、船橋市などの地価が上昇基調を強めているなかでも地価動向はさえない。
だが、山万ではそんな状況を顧みず、人が暮らす住宅を単純な「資産価値」でとらえずに、住宅街としての「利用価値」「住み心地」を重視し、街の新陳代謝を自ら仕掛けることで持続可能性を追求している。
当初は、山万がこうした街づくりを行っていることを、多くのデベロッパーは批判的に見るか、「変わったことをやる会社」程度にしか評価していなかったという。
「トレンド」だとサステナビリティ(持続可能性)を今さら掲げる大手デベロッパーとは、そもそもの価値観からして異なることを強烈に体現している街づくりと言えるだろう。