エピローグ/「永遠の友人」とは?
旧ソ連邦と新生ロシア連邦は欧州大手ガス需要家にとり信頼に足るガス供給源として、過去50年以上の長きにわたり天然ガスを安定供給してきましたが、これは当然です。
他に主要外貨獲得源がないゆえ、信頼に足る石油・ガス供給源としての地位確立は旧ソ連邦・新生ロシア連邦にとり国益そのものでした。
しかしウクライナ戦争によりその国益が大きく毀損され、世界の石油・ガスの流れは変わりました。
「築城五十年、落城一日」
ロシアの国益を毀損している人物こそ、ロシアの国益を標榜するプーチン大統領その人にほかならないと筆者は考えます。
上述通り、ロシアからウクライナ経由欧州向け天然ガスPLトランジット輸送契約は2週間後に失効しますが、このトランジットPLガスは(露ガスプロ以上に)欧州側にとり必要な天然ガスです。
EUはロシア産LNG輸入禁止を検討していますが、非現実的です。
欧州がロシア産LNG輸入を禁止すれば欧州ガス市場価格は暴騰、インフレは高進してEU諸国にさらなる極右台頭を促すことになります。
欧州の冬は厳しく、暖房用天然ガスが不足すれば、家の中で凍死するでしょう(過去実例あり)。
もう一つのウクライナ戦争、天然ガスを巡る紛争はウクライナ側に不利と判断します。
繰り返します。既存のトランジット輸送契約延長は「三方、良し」、失効は「三方、損」です。
19世紀の英国パーマストン首相曰く、“We have no eternal allies, and we have no perpetual enemies. Our interests are eternal and perpetual, and those interest it is our duty to follow” 「英国には永遠の友も永遠の敵も存在しない。あるのは永遠の国益のみ」。
もう一つのウクライナ戦争に勝利すべく、ウクライナを含む欧州政治家はこの金言を今一度想起すべきと筆者は考えます。