第7部 ロシアからウクライナ経由欧州向け天然ガスPLトランジット輸送契約失効間近
上述の通り、旧ソ連邦から欧州向け天然ガス幹線PLは、①ソ連邦白ロシアからポーランド経由東独向けと、②ソ連邦ウクライナから旧チェコスロバキア経由西独向け(支線PLでオーストリア向け)の2系統あり、西欧向けは①約2割、②約8割でした(この幹線PL以外に、トルコ向けバルカン陸上PLもあり)。
現在①のPLは稼働していません。②はウクライナ国内に2系統のPL輸送路ありますが、稼働しているのは1系統のみ。
露クルスク州とウクライナ国境の町スジャ計量基地で天然ガスが計量され、ウクライナ側に送圧されています。
繰り返しとなりますが、両国は戦争中ですがこの天然ガスPLは稼働しており、日量約4千万立米(年換算約150億立米)の天然ガスがロシアからウクライナ経由欧州にトランジット輸送されています。
露ガスプロムは今年11月16日、ウクライナ経由オーストリア向けPLガス輸出を停止しましたが、モルドバ・ハンガリー・スロバキア・チェコ・セルビア等には、今でもトランジット輸送されています。
このウクライナ経由欧州向けPLトランジット輸送契約は今年末に失効しますが、ウクライナ側は契約更改しないと対露通告。
露ガスプロムは欧州向けPLガス輸出の最後の砦を失うことになります。
しかし、トランジット契約失効は欧州顧客とウクライナ自身にとっても大打撃となります。
不足分を米国産LNG等で補填可能かどうかは未知数にて、数量的には不可能です。
冬場に入り欧州では天然ガス不足問題が予見され、欧州ガス市場では既にガス価格は上昇しています。
天然ガスは発電と給湯(暖房)に使用されます。
もう一つのウクライナ戦争は欧州顧客とウクライナにとり不利であり、最大の被害者はウクライナ国民になるでしょう。
筆者はウクライナ国民が家の中で凍死することを懸念している次第です。