第1部 2油種(北海ブレント・露ウラル)週次油価動静(2021年1月~24年12月)
最初に、2021年1月から24年12月までの代表的2油種(北海ブレントと露ウラル原油)の週次油価推移を概観します。
世界の現行原油需給は均衡しており、地政学的要因以外に油価上昇材料は存在しません。
北海ブレントはスポット価格、ロシアの代表的油種ウラル原油(輸出名REBCO=Russian Export Blend Crude Oil)は露黒海沿岸ノヴォロシースク港出荷FOB(Free on Board=本船渡し)油価です。
露ウラル原油は西シベリア産軽質・スウィート原油(硫黄分0.5%以下)と南部ヴォルガ流域の重質・サワー原油(同1%以上)のブレンド原油(URALs)で、中質・サワー原油。
一方、北海ブレントは軽質・スウィート原油です。
米国は2022年5月度よりロシア産石油(原油と石油製品)の輸入を停止。
一方、日本が2022年5月まで輸入していた露産原油3油種(S-1ソーコル原油/S-2サハリン・ブレンド/シベリア産ESPO原油)はすべて軽質・スウィート原油で、日本はウラル原油を輸入しておりません。
油価は2021年初頭より22年2月まで上昇基調でしたが、ウラル原油はロシア軍のウクライナ侵攻後、下落開始。
バルト海から出荷されるウラル原油の主要輸出先は欧州(オランダ)でしたが、ロシア軍のウクライナ侵攻後に欧州向けは激減し、輸出先を失ったウラル原油は暴落。
北海ブレントとの値差はロシア軍のウクライナ侵攻後、一時期最大バレル$40の値差となりましたが、最近は値差$13まで縮小しました。
しかし、原油品質差による正常値差は$2~3程度ゆえ、これこそ対露経済制裁効果と言えましょう。
ちなみに、今年12月9~13日の露ウラル原油週次平均油価は$60.65/bbl(前週比+$0.16)でした(bbl=バレル=約158.9リットル)。
この超安値ウラル原油を輸入し、自国で精製して石油製品(主に軽油)を欧州に国際価格で輸出して、“濡れ手に粟”の状態がインドです。
しかし、これはビジネスそのものであり政治的動機はありません。
一方、中国が輸入している原油はウラル原油ではなく、ESPO原油です。長期契約に基づきESPOパイプラインで供給されていますが、一部のESPO原油は極東コズミノ出荷基地から海上輸送されています。