ウォン安を警戒

 目先の問題もある。

「非常事態宣言を機にウォン安、株安が進んだ。特に、ウォンの動向は企業経営にも影響がある」とこの役員は指摘する。

 コスピ(総合株価指数)は12月3日の2500から9日は2360に下落した。2400を割り込んだのは2024年になって初めてのことだった。

 ただ、10日は2417にまで回復、何とか一本調子での下落に歯止めがかかったが、先行きは極めて不透明だ。

 為替レートはもっと深刻だ。

 非常事態宣言前日の12月2日に1ドル=1406ウォンだったが、11日は1426ウォンだった。2023年末には、1290ウォンだったことと比較すればかなりのウォン安だ。

 以前は、ウォン安は韓国経済にはプラスだった。いまも、造船や鉄鋼などの業界にとってはプラスだ。

 ただし、中国企業の価格競争力がさらに高まり、「ウォン安になってもすぐに世界市場でのシェアが上がらない」(製造業役員)。

 それどころか、輸入原材料や装置の価格が上昇し、苦しくなることも多いという。

 産業界では「1ドル=1500ウォン台」入りを警戒する声が強い。この水準までウォン安になれば、国内物価もかなり上昇しかねない。

 韓国銀行は11月に異例の2か月連続利下げで景気刺激に出たが、物価が上がれば、かじ取りが一段と難しくなる。

 もう一つ、韓国の産業界が懸念するのが「経済外交」だ。