「腹上死」かと思いきや

 早貴被告は被告人尋問でドン・ファンとの結婚の条件を語っている。それによると(1)セックスはしない、(2)田辺の自宅で同居しない、(3)月々100万円のお手当を貰う、ということだった。

 だが、吉田さんはそれも不確かであると言う。

「(3)だけは事実ですが、社長がセックスはしなくていいとか田辺の自宅で一緒に住まなくていいという条件を出したというのは彼女の創作ではないかとボクは思っています。数多の女性と関係を持ち、それを生きがいにしていたドン・ファンがそのような条件を呑むはずがありません。

 実は18年5月24日の事件発生後、警察による事情聴取を終えた彼女はボクに『警察には〈社長とセックスをしたことはありません〉と話した』と言ったのです。ボクが『なぜそんなウソを言ったのか』と追及すると、『だって本当だもん』と笑っていました」(吉田氏)

野崎氏が亡くなった翌日の夜、和歌山県警の捜査員から任意同行を求められた早貴被告(左)。中央の女性はお手伝いの大下さん(撮影:吉田 隆)
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 実は吉田氏は、この日の未明に、お手伝いさんの大下さんから野崎氏の訃報を聞かされた時、「腹上死」が頭をよぎったという。だが、田辺市の野崎氏宅に駆け付けて、大下さんやマコやんから腹上死ではないと告げられ、また驚いたという。

「早貴被告がドン・ファンと結婚したのは、遺産目当てだったことは間違いない。でもそれは別に犯罪じゃありません。遺産目当てであっても入籍し、夫婦生活を送り、その後、ドン・ファンが亡くなれば、妻である早貴被告は堂々と遺産を手にできる。だから、結婚直後にドン・ファンが腹上死したのであれば、早貴被告は見事に目的を果たしたのか、と思ったのです。

 ドン・ファンの死を内心願っているのなら、ドン・ファンと激しい性行為をすることで相手の寿命を縮めることも可能です。高齢者の激しい性行為は死と隣り合わせの危険性があることは知られています。そうやって、ある意味、“合法的”にドン・ファンを死に導いたのかと思ったのですが、どうやら違ったというので驚いたわけです」