だが検察は、早貴被告が何らかの方法で野崎氏に大量の覚醒剤を摂取させて殺害したと主張している。検察側の主張の通りだとすれば、吉田氏には一点、引っかかる点があるという。それは、「なぜ早貴被告は後期高齢者である野崎氏が寿命を全うするまで待てなかったのか」ということだ。

 結婚期間がどれくらいの長さになるかは分からないが、経済的には何不自由ない生活を保証してくれる野崎氏は、彼女にとって得難い存在だったはずだ。そして何年か後に野崎氏が亡くなれば、多額の遺産を手にできる。その確かな“果実”よりも、殺人犯として逮捕・起訴される危険を冒してまでも、野崎氏の命を奪う方を選んだのだろうか。それほど「紀州のドン・ファン」は彼女にとって邪魔な存在だったのだろうか――。

健康に悪影響が出そうな濃い味好み

 その疑問を考察するには、普段の野崎氏の生活ぶりを振り返る必要があるだろう。

 野崎氏は過去に2度、脳梗塞に襲われて死の淵を彷徨った経験がある。どちらも都内で仕事をしていた時に発症したもので、2度目のときは聖路加国際病院に運び込まれて一命を取り留めた。その後は自らの健康に留意するようになり、月に1度は聖路加に通って検査を受けていた。

 身長160センチで体重は70キロ以上であり、どちらかと言うと固太りの体型であった。タバコは吸わず 酒もビール1本程度、深酒はしなかった。

ビールジョッキに口をつける野崎幸助氏(撮影:吉田 隆)
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 ただ食生活においては濃い味付けを好んでいた。例えば好物のイチゴにしても、練乳をチューブ半分ほども絞りだして食べていたという。同様に、しゃぶしゃぶを食べるときには、ゴマダレを容器半分ほども使っていた。

野崎幸助氏と早貴被告。野崎氏はここから約2週間後に亡くなった(撮影:吉田 隆)
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