環境規制に後ろ向きな立場はトランプ氏も産油国も同じ

 プラスチックごみによる海洋などの汚染を防ぐための国際条約締結を目指す政府間協議が25日に開幕した。第5回となる今回が最終会合となるが、プラスチックなどの石油製品の原料を供給する産油国が規制の導入に猛反発しており、12月1日までの会期中に合意できるかどうか疑問視されている。

 産油国が抵抗を示しているのは、世界の原油需要は今後、プラスチックなどの石油製品が主体的な役割をはたすと見込まれているからだ。国際エネルギー機関(IEA)は「2021年から今年にかけての中国の原油需要拡大の9割が石油化学製品向けだった」と分析している。(11月25日付、OILPRICE)。

 アゼルバイジャンで開催された国連気候変動枠組み条約第29回締結国会議(COP29)でもサウジアラビア政府は19日、昨年採択された「今後10年で化石燃料からの脱却を加速させる」との成果文書について否定的な姿勢を示した。

 OPECのアルガイス事務局長も20日「原油は神の贈り物だ」と述べ、「脱化石燃料」の動きを強く牽制した。産油国は環境問題に消極的なトランプ政権の誕生に胸をなで下ろしていることだろう。

 アラブの産油国にとってはイスラエル寄りのトランプ氏の再登板は波乱要因である一方で、環境規制に消極的という立場では一致する。原油価格の長期的な低迷とトランプ政権の誕生が今後、中東情勢にどのような影響を及ぼすか、一層注視していく必要がある。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。