イランの反イスラエルデモ(写真:AP/アフロ)

米WTI原油先物価格(原油価格)は今週に入り、1バレル=72ドルから78ドルの間で推移している。原油価格のレンジ圏は、中東地域の地政学リスクにより先週に比べて6ドルほど上昇している。イスラエルによるイランの石油関連施設への報復攻撃が懸念されているが、実はイスラエルが慎重にならざるを得ない「急所」がある。石油関連施設への攻撃が回避されれば、原油価格は急落する可能性が高い。

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。

 供給面では、ロイターによれば石油輸出国機構(OPEC)の9月の原油生産量は前月比39万バレル減の日量2614万バレルと、年初来で最低となった。

 減少の大半はリビアだった。同国の中央銀行の支配権を巡る東西両勢力の対立により、リビアの原油生産量は日量30万バレル減少した。

 だが、足元のリビアの原油生産は回復基調にある。政治的な対立が決着したことで直近の数字は日量113万バレルとなり、以前の水準(同120万バレル)に戻るのは時間の問題だろう。

 温室効果ガスの排出削減の観点から、欧米の大手石油企業は原油生産に後ろ向きになりつつあったが、このところ変化が生じている。

 業界の中で最も積極的な動きを示していた英BPが10月に入り「2030年に石油・天然ガスの生産量を2019年比で25%削減する」との目標を撤回することが明らかになった。戦略変更の背景にはBPに対する市場の評価の低さがある。

 ライバルである英シェルと比べると時価総額が約4割の水準に落ち込んでおり、目先の利益を重視している投資家の要求に応えるため、BPは収益力アップのために原油・ガス生産の拡大に舵を切らざるを得なくなっている。

 世界最大の産油国である米国の直近の生産量は日量1340万バレルと再び過去最高となっている。

 他方、需要面の動きはどうだろうか。