イスラエルがイランに攻撃されたくない「急所」とは

 イランの石油関連施設が攻撃されれば、イランはイスラエルのガス田を攻撃する可能性が指摘されている*1

*1Iran Aims at Israel's Gas Assets if Conflict Ignites(10月4日付、OIL PRICE)

 日本ではあまり知られていないが、イスラエルは今やエネルギー輸出国だ。

 2000年代後半からイスラエル沖の東地中海で大規模ガス田が相次いで発見されており、現在生産中のタマル・リヴァイアサン地域で産出されるガスはエジプトなどに輸出されており、欧州への輸出計画も浮上している。

 戦争の長期化で財政が圧迫されるイスラエルにとって、貴重な外貨獲得の手段が失われるのはイランと同様、痛手だろう。

 自国の石油関連施設が打撃を受けることを恐れる湾岸産油国がイランに対して中立の姿勢を取っていることも難点だ。石油関連施設を攻撃されたイランとの間で全面戦争となり、米国がイスラエル防衛に加担しようとしても、湾岸産油国に存在する米軍基地が使用できない可能性が排除できなくなっている。

 このような点を踏まえ、筆者は「イランの石油関連施設への攻撃はイスラエルにとって代償が大きいのではないか」と考えている。

 市場では「イスラエルが原油輸出施設を攻撃すれば、原油価格はバレル当たり10~20ドル上昇する」との予測がコンセンサスになりつつある。だが、イスラエルがイランの石油関連施設への攻撃を断念すれば、その反動で原油価格は10ドル以上急落してしまうのではないだろうか。

藤 和彦(ふじ・かずひこ)経済産業研究所コンサルティング・フェロー
1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。