原油需要低迷で続く価格下押し圧力

 米国では夏場の需要期が過ぎたことで原油在庫は2週連続で増加しており、市場での不足感はなくなりつつある。

 米南部に上陸した史上最高クラスのハリケーン「ミルトン」が米メキシコ湾岸の石油関連施設の稼働に与える影響は限定的だとみられている。むしろ「フロリダ州などで大きな被害が出て、原油需要が停滞する」との懸念が生まれている。

 世界の原油需要を長年牽引してきた中国の状況も相変わらず芳しくない。

 中国政府は景気対策に本腰を入れ始めているが、「中国の原油需要を盛り上げるには力不足だ」と悲観的な見方が一般的だ。

イランからイスラエルに撃ち込まれた弾道ミサイルの残骸とイスラエル兵士(写真:ロイター/アフロ)

 シェルは7日「第3四半期の精製マージンが前期に比べて30%近く低下した」と発表した。世界的な需要低迷が主な理由だ。

 需給面で下押し圧力が強まっているが、これに抗っているのが中東地域の地政学リスクだ。10月1日にイランがイスラエルにミサイル攻撃を行って以降、市場は再び中東情勢に敏感となっており、イスラエルの今後の対応に注目が集まっている。

 バイデン米大統領は9日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で会談し、イランへの報復について自制を求めた。米NBCニュースによれば、イスラエルは標的として、イランの軍事組織や情報機関のインフラ、防空拠点、石油関連施設などを検討している。 

 イランの原油生産量は日量320万バレル。米国などの制裁にもかかわらず、そのうち170万バレルが輸出されており、主な買い手は中国だ。  

 イランの原油輸出の9割はペルシャ湾に浮かぶカーグ島が担っている。

 イランのパクネジャド石油相は6日、カーグ島を訪問し、革命防衛隊の海軍司令官に警備状況を確認した。

 調査企業「タンカートラッカー」によれば、カーグ島では原油の積載は引き続き行われているが、空荷のタンカーは別の場所に移送されている。

 イランの備えが固まりつつある中、イスラエル側の「急所」も見えてきている。