ヒズボラ停戦が原油価格の下押し圧力に

 石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの大産油国で構成するOPECプラスは12月1日にオンライン形式で閣僚級会議を開催する。

 注目が集まる中、イラクのスダニ首相とサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相、ロシアのノバク副首相は26日、バグダッドで会合を開いた。サウジアラビアのエネルギー省によれば、(OPECプラスのトップ3を占める)3カ国は自主減産を含めたOPECプラスの取り決めを完全に遵守することの重要性を確認したという。

 市場では「OPECプラスは来年1月から予定している日量18万バレルの引き上げを再度延期する」との見方が一般的だ。カナダ金融大手RBCキャピタル・マーケッツは「来年第2四半期後半にずれこむ可能性がある」と予測している。

 だが、増産を延期しても原油価格は上昇するどころか、下落するとの見方が出ている。

 JPモルガンは22日、OPECプラスが現在の生産量を維持するとの仮定の下、原油価格の長期見通しを公表した。それによれば、来年末の原油価格は1バレル=64ドル、2026年末時点の原油価格は同57ドルだ。

イスラエルとの停戦を喜ぶレバノンの若者たち(写真:AP/アフロ)

 原油価格を下支えしてきた地政学リスクの効果も薄れている。

 先週の原油市場は久しぶりにロシアの地政学リスクに反応したが、一過性に終わったようだ。11月23日付ニューヨーク・タイムズが「バイデン大統領がソ連崩壊後に米国がウクライナから持ち帰った核兵器をウクライナに返還する可能性があることを示唆した」と報じるなど、ロシアと米欧との緊張関係は高まっている。だが、市場の反応は鈍い。

 逆に、イスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラが停戦に合意したことが原油価格の下押し圧力となった。ゴールドマン・サックスは27日「トランプ次期政権の対イラン制裁強化による原油価格の高騰リスクが過小評価されている」との見解を示したが、原油価格を押し上げる効果はなかった。

 需要低迷のマイナス効果の方が勝っているからだ。

 過去20年以上にわたり世界の原油需要を牽引してきた中国の経済が本格的な回復軌道に乗らない限り、原油市場のセンチメントが改善することは見込めない。「第2の中国」と期待されるインド経済もこのところ足踏み感が出てきており、世界の原油需要拡大への貢献は限定的だ。 

 窮地に追い詰められつつある産油国は地球規模の環境問題への対応に急速に後ろ向きになっている感がある。