イランから中国への原油輸出ルートを封鎖?

田中:トランプ氏が今後4年間の任期中に実施しかねない、イランへの敵対的な行動としては主に2つあると思います。

 一つは、イスラエルがイランに軍事攻撃を仕掛ける際に、米国もイスラエル支援という名目で軍事行動に加わることです。もう一つは、アメリカが一方的に禁じてきたイラン原油輸出の「抜け道」になっている、中国への原油輸出を禁ずることです。

 後者に関しては、これまで二次制裁という形でイランを締め上げていたのを軍事レベルに引き上げる、という意味合いがあります。具体的には軍艦隊や沿岸警備隊を、イランから中国への原油輸出ルート上に配置し、船舶の臨検・拿捕を行うことは十分に考えられます。

──トランプ氏は「第3次世界大戦を未然に防ぐ」「Warmonger(戦争屋)を連邦政府から排除する」と主張して大統領選に勝利しましたが、むしろこれから起きることは逆のようにも思えます。

田中:トランプ氏がいう「第3次世界大戦」は、ヨーロッパを舞台にしたものであり、中東情勢を想定したものではないのでしょう。また、「Warmonger」な人物を高官などに指名しないという発言も、これまで発表されている政権人事を見ていると、むしろ中東情勢を混乱させかねない人物が並んでいます。

 例えば、国連大使に指名されたエリス・ステファニク下院議員は親イスラエル派として有名です。2018〜19年に国家安全保障大統領補佐官を務めた典型的ネオコンのジョン・ボルトン氏も、どうやら要職就任を目指してトランプ氏に秋波を送っている様子です。

 すでに政権移行チームでは、国務省の人選を担う責任者に1期目でイラン担当特別代表を務め、イラン強硬派として知られるブライアン・フック氏が任命されています。基本的にアメリカには無条件での親イスラエルの政治家が多く、仮にトランプ氏が「Warmongerな連中」を排除したとしても、その極端な中東政策を修正することは困難でしょう。

イランの核施設=2005年撮影(写真:Reuters TV/ロイター/アフロ)

──結局のところ、イスラエルとイランの関係は…

田中:さらに悪化すると見るべきです。その結果、イラン国内で核武装論が横行することになると見ています。

 そうなると、従来から「イランが核武装すると私たちも核を持つ」と明言しているサウジアラビアも核武装に進むことは間違いありません。中東情勢はさらに混乱していくでしょう。