米国はイランを刺激したくはないが、ネタニヤフ首相の言いなりに

田中:「イスラエルへの武器供給を止める」ことだけです。ただ、これも無理だと思います。反パレスチナであり、イラン強硬派の共和党が上下両院を握りましたから。

 そもそも私たちが認識しておかなければならないのは、イランとの核合意を潰した張本人がトランプ氏だということです。基本的にトランプ氏はイランを「米国の安全を脅かす存在」と見ており、経済制裁を含めた厳しい措置を下していくでしょう。

トランプ氏(左)とイスラエルのネタニヤフ首相(右)=2017年撮影(写真:AP/アフロ)

 すでに、米国はイランに対する姿勢をより厳しいものにしはじめています。例えば、トランプ氏の当選後の11月8日、米司法省はイラン在住のアフガニスタン人を(イラン革命防衛隊当局者からの指示を受けトランプ氏暗殺を企てたとして)起訴しました。私は、これは「おとり捜査」による可能性が高いと見ていますが、少なくとも現在まで、FBI(米連邦捜査局)によるアフガニスタン人に対する聴取以外に何の物証も公開されていません。

 2011年にも似たようなケースがありました。司法省がFBIの捜査をもとに、米国在住のイラン系アメリカ人を駐米サウジアラビア大使暗殺を企てたとして起訴したのですが、このケースでもFBIのおとり捜査官はこのイラン系アメリカ人をイラン革命防衛隊の高官とされる人間に接触させ、暗殺計画を動かしたところで逮捕しました。アメリカは一貫してイランに強硬な手段に出る国なのです。

 しかし、その一方で、トランプ氏自身は(税金を使う)米軍を動かすことには非常に否定的です。そのため、自ら率先してイランに対する軍事行動に出ることは本意ではないでしょう。

 ただ、ネタニヤフ氏がイランの無力化とレジームチェンジ(体制転換)を目指している以上、トランプ氏はそれに同調するでしょう。イランを挑発し、結果的にイスラエルの動きに乗じて直接的な軍事行動に乗り出す可能性を考えるべきです。

──具体的にはどのような事態が想定されますか。