「大人向け」を開拓したあのガチャガチャ

 一つの象徴と言えるのが、キタンクラブが2012年に発売した「コップのフチ子」だ。

 コップのフチ子はSNSやメディアでも注目され、ガチャガチャ市場において新しいブームを作るきっかけとなった。特に大人向けの商品としての成功例であり、ガチャガチャが子どもだけでなく幅広い層に受け入れられることを証明した商品でもある。これを機にサブカルチャー的要素を含んだ大人向け商品が増えてきた。

大人向け商品として成功を収めた「コップのフチ子」(キタンクラブ)大人向け商品として成功を収めた「コップのフチ子」(キタンクラブ)

 最近では、2023年や2024年の商品の特長として、昭和レトロ、平成レトロの商品が多く発売されている。そのほか、懐かしのアニメキャラクターや食品サンプル、ギミック(仕掛け)がある商品など、より趣味性の高く、かつ大人向け商品が目立つようになった。

ビクター ヒストリカル ミニチュア コレクション。レトロものの人気も高まっている(写真:ケンエレファント)ビクター ヒストリカル ミニチュア コレクション。レトロものの人気も高まっている(ケンエレファント)

 また、デジタル技術と融合した例も増えてきた。例えば、スマートフォンと連携した新しい体験型ガチャガチャや、オンライン注文後に商品が自宅に配送されるサービスなど、新たな購買スタイルも登場している。

 この10年間で、ガチャガチャ業界は大きな進化を遂げ、約800億円規模の市場を築き上げた。そのカプセルの中には、小さな驚きと喜びが詰まっている。これは単なる玩具ではなく、人々の生活にちょっとした楽しさを提供する文化そのものと言えるだろう。ガチャガチャ業界の未来は明るく、その可能性はまだまだ広がり続けるに違いない。(続く)