7.危うし金正恩王朝、崩壊の足音

 北朝鮮と韓国が睨み合う朝鮮半島は、朝鮮戦争が停止している「休戦協定」の状態である。

 戦争が完全に終結した「平和条約締結」までには至っていない。両国関係はまだ危険な状態にあるのが実情だ。

 北朝鮮がこの状態を放置しておいて、露朝の軍事同盟に基づいてウクライナでの戦争に兵員を派遣し、ロシアの要求にすべて応えることは無謀で危険なことである。

 北朝鮮は、このことを深刻に考えているのだろうか。

 ロシアは、朝鮮半島の対立関係や北朝鮮の国内事情を考慮することなく、お構いなくより多くの兵員の派遣を期待し、要求するだろう。

 地上戦闘を有利に進めるために、より多くの兵士が必要だからだ。

 国内の金正恩体制への影響を考えると、北朝鮮の兵士は死亡し帰国できなくなり、国民は戦争実態の悲惨さを知ることになる。

 その結果、兵士たちが食料支援や安いお金で身売り同然になっていることなど、兵士派遣への不満が、金正恩氏およびその体制に向けられる。

 そして、国内に反乱の火種を抱えることになるだろう。

 北朝鮮は、ロシアからの軍事協力を得て喜んでばかりではいられない。

 ロシアは、できる限り多くの派兵を望むが、それに応えられる限度をどこにするのかが、両国の戦略となるであろう。

 プーチン大統領が、金正恩総書記を持ち上げれば持ち上げるほど、北朝鮮は、断ることが難しくなる。

 北朝鮮人民、特に若者層には、韓国の映画などで北朝鮮が独裁国家で人民が虐げられてきたことを認識している者が一定数いる。

 これに、死地に送られた兵士や派遣した軍の不満が重なり合えば、体制への反発のうねりが高まることになる。

 これまでのような笑顔で人民のために統治するという金正恩総書記の化けの皮は剝がれてしまう。

 人民を力でどこまでねじ伏せられるか。今までは国内に危機と敵を作ることにより、批判の矛先を外部に向けさせてきたのが北朝鮮である。

 ウクライナへの軍事協力で、朝鮮半島の火薬庫に火が付く恐れが出てきた。