組織を動かすのは経営者の情熱

 アメリカのギャラップ社が2020年に実施した企業の意識調査によると、日本企業には「熱意あふれる社員」の割合がわずか5%しかいないというのです。これは米国34%、中国17%、韓国12%と比べても大幅に低く、世界で最下位レベルです。それが日本経済低迷の根本的な要因だと分析しているのですが、稲盛さんは皮膚感覚でそれが分かっていたのです。

 稲盛さんには、社員の意識は上司の写し絵でしかないという確信がありました。上司に熱意がないのに部下だけが燃えているようなことはあり得ないというのです。

 日本人は真面目であり「考え方」はしっかりしています。個々人の「能力」も高いはずです。社会インフラなどの物理的条件も他国に劣ってはいません。ただ、社員の「熱意」だけが徹底的に劣ってしまっているのです。

 その社員の「熱意」は上司の写し絵なので、冷めた上司が「いくら高めろ」と言っても決して高まるものではありません。

 社員は上司を見て仕事をしているので、まずは経営トップが燃えるような情熱や不屈不撓の一心を行動で示すことが不可欠なのです。社員の熱意が高まらないのであれば、それは経営者の情熱・エネルギーが不足しているからに他ならなのです。

 どんな高級車でもガス欠では走れません。経営者はガソリン、つまりエネルギーを社員に注入し続けなければ、社員は立ち止まってしまいます。

 そうであれば、日本経済を復活させる最良の方法は、稲盛さんが指摘するように、経営者がまず潜在意識に透徹するほどの強く持続した願望を持ち、社員の先頭に立って社員にエネルギーを注入し続けることです。それができる経営者なのかどうかが、今、問われているのではないでしょうか。