「公共交通の弱点をどの程度克服できているか」が指標になる

 これはスイスとオーストリアで開発されて用いられている手法で、ドイツ版の検討もミュンヘン工科大学の研究チームを中心に進められている。

 ドイツ語では ÖV-Güteklasse、英語では Public Transport Service Quality Classificationの頭文字からPTSQCと呼ぶことが多いが、定訳が定まっているわけではない。

 ちなみにÖV はÖffentlicher Verkehrの頭文字で公共交通を指し、Güteklasseとは品質水準のことである。

 余談だが、ドイツ語圏で生活していてGüteklasseという単語を最も頻繁に見かけるのは、食用の鶏卵の品質基準を指す場合である。

 公共交通には、駅や停留所という「点」でしか乗り降りできないという決定的な弱点があることは前回述べた。その「点」までは、基本的には歩いたり自転車に乗ったりすることになるが、その距離には限度がある。

 さらに、公共交通は時刻表に従って走る。都心のように数分おきに来る場合はともかくも、そうでない場合は自動車のように乗りたいときにいつでも乗れるというわけにはいかない。これもまた、公共交通が抱える決定的な弱点である。

オーストリアの鉄道駅の電光掲示板の例。上り・下り両方がまとめて表示されており、それぞれ30分間隔である(フォアアールベルク州のLauterach駅、筆者撮影)オーストリアの鉄道駅の電光掲示板の例。上り・下り両方がまとめて表示されており、それぞれ30分間隔である(フォアアールベルク州のLauterach駅、筆者撮影)
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 逆に言えば、ユーザー目線から、これらの「弱点をどの程度まで克服できているか」が、公共交通のサービス水準を示す重要な指標となる。

 言い換えれば、この弱点の克服度合いこそが、公共交通がどの程度第二、第三の機能を果たしうるかをはかる指標となる。