住職が替わり、見ず知らずの人間が寺に出入りしだす…「黄色信号」とは

 莫大な固定資産税がかかる都心の一等地にある寺院であっても、年収数百万円レベルの寺はいくらでもある。到底支払えるものではない。相続税も同様である。課税されれば結果的には、街の中から信仰の場がなくなり、文化資源もなくなり、貴重な緑地もなくなってしまう。結果的には、国民が損をすることになってしまうのだ。

 さらに宗教法人には、「みなし寄付金」の適用もある。これは寺院が、収益事業で得た収入を、本来の宗教事業に使った場合には所得金額の20%を限度額として寄付金とみなすという制度だ。これも、一般企業よりも優遇枠が多くなっている。

 以上のように宗教法人の多くの「メリット」を得ようとして、悪意のある者が寺院に群がる構図になっている。宗教法人の転売はカルト教団をはじめとする反社会的集団の拠点化にもつながり、地域の安全をも脅かしかねない。

 人口減少に伴い地域のつながりが希薄化するなかで、監視の目が行き届かなくなっているのも、こうした危うい構造を生んでいる元凶だ。

 ある日、菩提寺の住職が替わり、見ず知らずの人間が寺に出入りしだす。寺院が、檀信徒に説明をすることなく大きな事業を始め、生活が派手になりだす。そんな兆候が現れ始めたら、「黄色信号」だと考えたほうがよいだろう。

仏教の未来年表』(鵜飼秀徳著、PHP新書)