多様性とは程遠い立候補者の属性、40歳未満はわずか11.6%
新旧の象徴的な選挙区を2つ取り上げてみたが、残念ながら今回の総選挙も候補者の顔ぶれを見る限り多様性の確立には程遠い結果となっている。
全立候補者数は1051人で小選挙区比例代表並立制を導入した1996年以来、最も少ない。日経新聞の報道によると、40歳未満の割合は11.6%、女性比率は23.4%、新人は半数にとどまる。
これでは政界の世代交代や構造改革は進まない。有権者の政治不信、諦め、絶望感は改まらず、投票率も6割を切るような事態となってしまうのではないか。
今回の総選挙は、金権腐敗で独裁的な自民党政治を許してきた永田町の体質を変える絶好の機会となるはずだった。旧来の「うみ」を出し切り、大胆な新陳代謝を進めることで、若い世代や女性などの声も反映し、民意に基づいた政治が繰り広げられる──。そんな新たな政界の姿を見るチャンスだったと言える。もはやそれは絶望的なのだろうか。
まだ投票日まで日はある。まったく可能性がないわけではない。政界構造改革、大変貌の起爆剤となるのは、やはり投票率である。ここでは若者の投票率と中高年の投票率の2つに注目したい。
まずは若者の投票率を見てみよう。平成26年(2014)、平成29年(2017)、令和3年(2021)の過去3回の20代の投票率は32.58%、33.85%、36.50%で、毎回、全体より20ポイントほど低くなっている。30代は42.09%、44.75%、47.13%で20代よりは10ポイントほど高いが、全体からは10ポイント低い水準だ。
そんな20代もかつては60%台を記録していたこともあった。例えば昭和55年(1980)の大平正芳内閣のハプニング解散では、全体の投票率が74.57%と過去19回で最高だったが、20代63.13%、30代75.92%と若者世代も高率となっている。
社会党が政治腐敗や物価高などを理由に内閣不信任案提出を決め、民社、公明が賛成に回ったほか、「四十日抗争」と言われた自民党内の派閥抗争のあおりで反主流派の多くが本会議を欠席したため、56票差で可決されてしまった。
これを受けた大平首相が解散に踏み切ったという経緯がある。しかも、選挙中の6月12日に大平首相が急死するという緊急事態に。総選挙の結果は弔い選挙となったこともあり、自民党の大勝となった。
この事態を受け、当時の有名な政治記者は「四十日抗争、ハプニング解散、首相急死という事態が立て続けに起きたことが有権者の政治への関心を高めた」と分析していた。政治を舞台にしたドラマが立て続けに起きたことで若者世代も関心を持って投票所に向かったということか。今回の自民党金権腐敗、総理就任直後の解散はどれだけの投票率アップにつながるのだろうか。