若者の投票率低下とともに深刻な40~50代の「政治無関心ぶり」

 つまり政治が身近に感じられれば若者世代も投票に行く可能性が高いということだ。

 それは今年の都知事選挙でも、石丸伸二候補や安野たかひろ候補の登場、SNS選挙戦の展開などで全体の投票率は前回の55.00%から60.62%へと5ポイント以上もアップした。20代は44.95%で前回の41.17%よりも3ポイント以上、30代は57.75%で前回の50.23%よりも7ポイント以上高くなった。

 前回に比べ若者世代に近い候補者の登場やSNS選挙の活用で政治が身近に感じられた結果だろう。ところが、今回の総選挙では20~30代の候補者が1割を切るという寂しい状況だ。残念ながら、これでは若者世代を投票所に足を運ばせるのは難しいのではないか。

 中高年世代の投票率にも着目したい。過去3回の総選挙の投票率だが、40代は49.98%、53.52%、55.56%と平均で50パーセント台半ばとなっている。50代は60.07%、63.32%、62.96%で平均は60パーセント台前半だ。

 30年ほど歴史の針を戻すとどうなっているか。平成2年(1990)の40代は81.44%、50代は84.85%と驚異的に高い投票率となっている。これは、その前後もほぼ同じような傾向だ。約30年間で40代は25ポイント、50代は22~23ポイントもの大幅低下となっている。

 総選挙での投票率は若者ばかりが注目されるが、低下ぶりを見ると中高年世代も深刻な状況だ。青春時代を「失われた30年」の中で過ごしてきた世代。格差社会における社会からの疎外感や生活苦などで選挙に関心が向かわないということなのだろうか。今回の選挙では40~50代の投票率にも注目していただきたい。

 田中角栄、中曽根康弘、海部俊樹、小渕恵三、橋本龍太郎、石破茂──。自民党の歴代総裁で総理大臣経験者、現総理の顔ぶれであるが、共通項は初当選が20代ということ。世襲政治家が多いのは否めないが、歴史的な評価はともあれ若いころから政治家を志し、実績を積み重ねた結果が権力掌握につながったことは間違いない。

 と同時に、時代に関係なく若手政治家の活躍は同世代の有権者に対し政治に関心を抱かせる結果となる。現在の国会では20代政治家は数えるほどしかいない。一部には現在25歳となっている被選挙権年齢の引き下げを主張する提言も出ている。課題は多い。

 総選挙で自公が過半数割れに追い込まれたとしても、追加公認や保守系政党を連立政権に参加させることで政権維持を図ろうとするだろう。大きな変革は期待薄である。とはいえ、たとえ一部でもいいから永田町の構造改革に向けて変革の一歩につながるような選挙結果を期待したい。

衆議院議員選挙に臨む与野党9党首衆議院議員選挙に臨む与野党9党首(写真:共同通信社)

【山田 稔(やまだ・みのる)】
ジャーナリスト。1960年長野県生まれ。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。主に経済、社会、地方関連記事を執筆している。著書は『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』『分煙社会のススメ。』など。最新刊に『60歳からの山と温泉』がある。東洋経済オンラインアワード2021ソーシャルインパクト賞受賞。