いまひとつ盛り上がらない総選挙いまひとつ盛り上がらない総選挙(写真:共同通信社)

 10月27日に投開票を迎える第50回衆議院議員総選挙は、いよいよ最終盤に突入した。大手メディアの情報分析は序盤の「自公過半数確保」から「自公過半数微妙」へと変化してきた。とはいえ、選挙戦の盛り上がりは日本中が熱気に包まれていた民主党政権誕生につながった2009年の第45回総選挙の時とは大違いだ。今回は有権者からの盛り上がりが感じられない。期日前投票を行った人は20日までで467万人と、前回を100万人も下回っている。

 その背景には永田町政治が旧来の構造にどっぷり浸かり、多様性を排除し、若者をはじめとする有権者から遠い存在になってしまっていることがある。その現状をジャーナリストの山田稔氏が検証した。(JBpress編集部)

「世代交代」「旧態依然」全国的に注目を集める2つの選挙区

 今回の選挙で全国的に注目を集めている選挙区がある。東京18区。武蔵野市、小金井市、西東京市をエリアに持つ選挙区で、菅直人元首相(77)が地盤としてきた。

 政界引退を決めた菅氏が後継者に選んだのは、前武蔵野市長の松下玲子氏(54=立憲民主党)。市長時代の実績をもとに「活力ある福祉社会」を公約に掲げている。

 松下氏に対抗するのが、農水省職員出身で元法務大臣秘書官だった福田かおる氏。39歳の自民党新人ながら「実務がわかる働く世代の政治家」をアピールする。この2人以外に参政党の徳永ゆきこ氏(47)が党の3つの決意と7つの行動を掲げ、日本共産党の樋口まこと氏(37)は「自民党政治をもとから変える」を訴えて立候補している。

 この選挙区では長いこと菅氏と総務副大臣などを務めた土屋正忠元武蔵野市長との間で「土菅戦争」が繰り広げられてきた。保守派とリベラル派が争う構図だが、20代や30代の有権者は、「またあの2人か」とベテラン政治家の戦いに距離を置きがちだった。政治に身近さを感じられなかったのだ。前回は現職の菅氏に元防衛副大臣の自民党議員(59)が挑んだが、新鮮味はなし。6000票余りの差で菅氏が議席を守った。投票率は59.86%だった。

政界引退を決めた立憲民主党の菅直人元首相政界引退を決めた立憲民主党の菅直人元首相(写真:共同通信社)

 それが今回は一転した。候補者の平均年齢が一気に若返り、全てが新人。4人中3人が女性だ。菅氏の後継者となった松下氏が最年長。今回は共産党が候補者を擁立したため、リベラル票が分散し激戦が予想されている。

 10月21日には小泉進次郎選挙対策委員長が応援に入った。若い有権者にとってはベテランだけでなく初めて世代の近い候補者が出てきたうえ、女性も多いということで身近さを感じられているのではないか。党派にとらわれない若い世代が投票所に足を運んだら、どんな選挙結果が出るのか。従来とは違う展開に、その結果が大いに注目されるところだ。

 全国的な注目を集めている選挙区はまだある。5人の候補者が立候補した和歌山2区(海南市、橋本市など)だ。

 引退した自民党の長老・二階俊博元幹事長の三男の伸康氏(46)や、裏金問題で離党処分となった世耕弘成前参院幹事長(61)が無所属で出馬した。“仁義なき保守分裂選挙”となったのである。

 こんな旧態依然の戦いとなった同選挙区には立憲民主党から新古祐子氏(52)、共産党から楠本文郎氏(70)、諸派の高橋秀彰氏(42)の3人も立候補しているが、選挙民は一体どんな選択をするのか。いろんな意味で注目される選挙区だ。