もはや「石破カラー」に固執している場合ではなくなった

 注目すべきは公明の石井啓一代表が17日のテレビ番組で、物価高対策として公約した低所得世帯向けの給付金について「1世帯10万円」と目安に言及したことだ。給付対象についても、住民税非課税世帯より広げることに含みを持たせた。

 世論調査などでは、衆院選を巡る有権者の最大の関心事は「物価高対策」であることが目立つ。不記載問題では与党が防戦に回りがちであり、実際に押し込まれているのは否めない。

 政権側は既に13兆円を超す規模の補正予算編成を表明しており、後半戦は給付金など具体的な経済対策を前面に出し、何とか論戦の主導権を握ることを狙うようだ。

 もはや安全保障など「石破カラー」だけに固執している状況ではなくなった、とも言える。

 これに対し、野党第一党の立憲民主党は解散時の約100議席を大きく伸ばす見通しだ。

 公示日には、野田佳彦代表や小川淳也幹事長らが「裏金」議員とされる候補者がいる小選挙区を回るなどの徹底ぶりだ。野田氏は「政権交代こそ最大の政治改革」と攻勢を掛けており、その戦術は一定の効果を上げている。

衆院選が公示され、第一声を上げる立憲民主党の野田佳彦代表=15日午前、東京都八王子市(写真:共同通信社)衆院選が公示され、第一声を上げる立憲民主党の野田佳彦代表=15日午前、東京都八王子市(写真:共同通信社)

 半面、一つの小選挙区に複数の野党候補が出る「乱立」状況が目立ち、票の分散化が懸念される。多くの小選挙区で野党候補一本化が成就しなかったことに関し「政権交代実現を阻むことにもなり非常に残念」(前職)との落胆が漏れた。

 躍進のチャンスを得た立民にとっても、いわば「好事魔多し」のような事態が起きているわけである。実際に与党側からは「もし野党一本化が進んでいたら、こっちは、もっと大変なことになっていた」(自民党関係者)との声が聞かれた。

 石破首相自身が「(2012年の)政権奪還以来、初めて迎える逆風の選挙」と訴えている、まさに異例尽くしの戦い。有権者の審判が下るまで、あと数日に迫った。