自民も公明も、ずいぶん優しいペナルティではないか?

 なにより安倍派をはじめその他の派閥は公党中の公党であるべき存在であるはずの与党の政党内組織であるのと同時に政治団体でもあった(現在は麻生派を除き解散)。

 その派閥において、組織的に違法な不正行為が常態化していたと推論されるのである。果たしてこれを「うっかり」とみなすことができるだろうか。

 なお「政治改革大綱」には政治倫理審査会に関して、「自発的な解明の機会の道をひらくための改正をおこなう」と記されていた。だが、我々が目にしたのは政治倫理審査会が見事なまでに機能不全を起こした様であり、いま、自民党のみならずその改正と規制強化を主張する政党もあまり見当たらない様である。

 こうした自民党の裏金疑惑議員らに対する自民党の「ペナルティ」は、非公認、比例との重複立候補禁止で、前者は結局12人、後者は34人にとどまった。公認されない場合に刺客を立てたりするわけでもなく、ネットでは結局こっそり支援しているという投稿も相次ぐ。ずいぶん優しく感じられるがどうか。

 もう一つ特筆すべきは公明党の動きだ。公明党はこれまでも政活費を使わず、政治とカネの問題解決に積極的に取り組んできた。令和の政治とカネの問題でも、今年1月の早い時期に「政治改革ビジョン」を公開し、そこでの提案は改正政治資金規制法につながった。

埼玉県草加市での街頭演説で手を上げる自民党総裁の石破首相(右)と公明党の石井代表=13日午後(写真:共同通信社)

 ここまでは評価できるが、自民党裏金疑惑議員ら35人を推薦したのである。そのなかには自民党が、裏金疑惑が3000万円近くになったため公認しなかった三ッ林裕巳氏と、安倍派事務総長で自民党から1年間の「党員資格停止」の処分を受けた西村康稔氏が含まれている。他にも1000万円前後の裏金疑惑議員を多数推薦している。

 公明党は、説明責任を果たしたか、公明党への貢献、地元の納得という独自の3条件を示したが、その条件がまさか自民党より寛容に運用するとは意外だった。

 石井代表も自民党非公認議員を公明党が推薦することは考えにくい旨を発言していたからである。特に自民党非公認候補者を推薦した埼玉14区には石井代表が、兵庫県にも2人の小選挙区の候補者がいることからやはり自民党とのバーター的に見えてしまうし、彼らが禊を果たしているかという点についてもあまり説得力を感じられない。

 選挙後、どのように公明党がこの判断について説明し、政治とカネの問題解決に挑むのかも注視したい。

◎カンテレ「【衆院選2024】“裏金問題”で自民非公認も「公明推薦」 野党の立候補予定者たちは猛批判(兵庫9区)