やましいことに使っていないのか、ろくに説明責任は果たされていない

 筆者は最近、問題の所在の細部が一般に十分に理解されないままになっていることが一因なのではないかと考えている。

 例えば「裏金疑惑」が具体的に意味する内容は理解されているだろうか。「うっかりミスなのに十把一絡げに批判すべき問題か」という声も根強い。改めて簡単に説明しておこう。

 令和の政治とカネの問題は、政治資金規正法上の収支報告書の不記載に関連する問題と、政党から政治家への寄附にあたる政策活動費の問題、旧文通費に関する問題に大別することができる(他に香典不正を機に議員辞職した堀井学氏のように複数に関係するケースもある)。

 収支報告書の不記載に関する問題は、政治資金パーティーのパーティー券の販売の売上のうち事前に派閥が課したノルマを超過した分を各議員に事実上のインセンティブとしてキックバックしていたものなどである。これらを収支報告書に記載していなかった。

 かつての総裁派閥であった旧安倍派を筆頭に自民党全体で88人にものぼったのである。理由や一覧は以下のサイトなどに記されている。

◎日本テレビ「【一覧】自民党国会議員の"裏金"リスト 88人

 なお先日、安倍派の事務方である会計責任者の有罪が確定した。過去5年間で約6億8000万円もの不記載である。一般に個人の所得として放置されていたと捉える場合においても所得税が支払われていないことになり脱法的である。

 金額は多い者においては、数千万円にのぼる。個人ではなく組織として使用したのであればいったい何に使用したのだろうか。税金もかからず、使途も示さなくて済む「裏金」である。やましい使い方を想像したとしてもまったく不思議ではないだろう。如何せんろくに説明していないどころか、その気もなさそうなのだから。

 先の一覧を見ても、いろいろな「説明」をしている者もいるが、「お話することはできない」などと述べている者や未回答の者も目立つ。

 やましくない使途であれば、領収書など有力なエビデンスをもって釈明するべきだし、やましいことがあるならまずは説明し謝罪するのが筋だ。ところがそのようなことはほぼなされておらず、自発的な疑惑解明の場であり、偽証罪にさえ問われないはずの政治倫理審査会にもほとんどの議員が出てこなかったのである。

 確かに改正政治資金規制法は先の通常国会で成立した。そのことで完璧とまではいえないが、ある程度、将来の不正を抑止する効果は改善したものと考える。けれども、こうした過去の不正の説明責任はまったく果たされておらず、自民党が調査を打ち切っていることから今後も明らかになる見通しは立っていない。